第306話 1540年 10歳 亡命王子は琉球王国の革命出来るかな・最終戦( 35 那覇と首里の間で、王子軍が崩れる)
<危機!精鋭三百の突撃>
王府将軍・謝名親盛が、編成し直した第1軍から第3軍までの隊長を集めた。
謝名親盛「各軍から精鋭を100名出せ。指導力のあるのはいらん。純粋に戦闘力だけだ」
各軍の隊長は戸惑った。
隊長「そしたら我が隊の動きは悪くなりますけど」
謝名親盛「良いのだ。儂がその精鋭300名を率いて先陣を走る。陣形は紡錘陣形だ。俺達が先頭で敵陣に穴を開けるから、お前達は広げるだけだ。臨機応変さはいらん。
紡錘陣形は先端が大事なのだ。
兵数3千の一斉攻撃だ。
お前達、今日で全ての決着をするぞ。
賊軍の王の首を取ってきた奴は、報奨は思いのままだぞ」
隊長や他の兵士が「おーー」と歓声を上げた。
士気は兵士全員に満ちている。
一方、尚世真王軍は、尚世真自ら出陣することとなった。
兵数は二千。
新兵は半分ほどいる。
新兵の訓練は少しした程度である。
尚世真王自ら出陣なので、糸満砦の守備はほぼゼロとして総力戦となる。
普段兵装などしない山田でさえ、兵装をして防備している。
今回は淀橋までも兵装をして帯同することになった。
山田「寝弟(淀橋)、今回は絶対寝たらダメですよ。僕らも武装しなくてはいけないくらい緊迫しているのですからね。寝たら本当に永遠の眠りになりますよ」
淀橋「流石に寝ないよーー。僕、戦場は初めてだから怖いよ」
山田「王子の側にいれば安全ですよ」
尚世真王軍は、那覇と首里の中間地点の開けた部分に差し掛かる。
豊見城(とみぐすく※地名で城ではない)周辺だ。
山田「長兄、王家軍を迎え討つ準備をして下さい。今回の敵は多分強いので、守備中心で良いですよ」
小島「賢弟がそういうなんて珍しいな」
山田「普通の敵なら、我々の糸満砦を攻撃してきました。そしたら我々は万全の守備をひいていたので、敵の数を徹底的に削る事が出来ました。
今回の敵は、我々の糸満砦の万全の守備を見て、じっと待つ事が出来た敵です。
そして我々が糸満砦を出て、野戦に出た所を急襲する敵です。
強いに決まっていますよ。
ですので、長兄(小島)は守備の中心でお願いします。
李超さんと次兄(大助)は、相手陣形がどうあれ、両側面を突く形でお願いします」
偵察に出ていた赤目三姉妹の長女が、山田に報告する。
長女「王家軍は半刻のさらに半分ほどの時間で、こちらに向かってきます。敵は精強です。ご用心を」
軍は横陣3列に二千人を並べ、最後方には尚世真王が津村と早瀬に守られている。
王の側で、淀橋が居候のように小さくなっている。
山田「1列目は盾の準備を。2列目は槍の準備。3列目は弓の準備をして下さい。間もなく来ますよ」
最初は小さかった地鳴りが、辺りを震わす地響きとなる。
地面が波打つようだった。
敵は3千だ。
淀橋が地響きで震えて、しゃがみ込む。
尚世真王が、淀橋にそっと手を差し出す。
尚世真王「大丈夫ですよ、怖いのは同じです」
尚世真王が淀橋に優しく微笑む。
<緊迫!崩れる中央>
第1陣の中央部が消し飛んだ。
敵の紡錘陣形が効いているのだ。
味方1に対して、敵2くらいで攻撃される形となる。
山田が信じられないという顔をする。
中央部には長尾軍の精強な重装歩兵を置いたのだ。
数々の戦場を渡り歩いたベテランを配置した。
それなのに消し飛んだ。
その事実に、山田の背中の冷や汗が止まらない。
山田「早く中央の穴を塞げ。そこから突破されるぞ!!!」
大助や李超は、両側面から紡錘陣形の横をえぐっていく。
だが、紡錘陣形の前の部分の突進は止まらない。
大助や李超も、これまでと違う敵の強さに、このままではまずいとつぶやく。
山田「長兄、頼みます」
一人気を吐く小島。
両手十字槍を振り回し、敵を突いていく。
しかし、敵が倒れてくれない。
致命傷を与えているのに、敵がまだ前へ進む。
戦意が衰えない。
大助や李超も、前方と後方を分断して前方を包囲殲滅しようとする。
だが、大助や李超が敵中に孤立してしまった。
結局、大助と李超は包囲の外に脱出することになり、挟撃は失敗に終わる。
大助や李超が小島の元に走る。
両手十字槍を振り回す小島の元に、長い顎髭を蓄えた男が近づいた。
その男が、小島の頭に槍を振り下ろしてきた。
ガキーンと鋼鉄同士のぶつかる音がして、小島はその男の槍を弾く。
謝名親盛「お前が大将だろ? お前を殺せばこの軍は終わりだ。そうだろ?」
そう言って謝名親盛が槍を横なぐりにして、小島の胴体を2つに分けようとする。
小島はその槍を打ち下ろし、致命傷になるのを防ぐ。
小島「お前も出来るな、名乗れ」
謝名親盛「俺と打ち合うことが出来る者がいるとは思わなかった。俺の名前は謝名親盛だ。地獄に行くまで覚えていろ」
山田「長兄(小島)、一騎打ちなんてしちゃダメだー。前線戻ってーー」
山田は大声で叫んだ。
小島にすれば、謝名親盛からの攻撃を反射で受けてしまい、反射で攻撃しているだけなのだ。
小島と謝名親盛が一騎打ちをしている間、前線は小島で持っていたのに、それが崩れた。
3列目を突破する敵が4名。
王子に斬りかかる。
津村が一人。
早瀬が一人片付ける。
残る2名が同時に尚世真王に斬りかかる。
津村「間に合えーー」
2名の内、一人の首筋に手裏剣が突き刺さった。
手裏剣を放ったのは三女すみれ。
三女すみれ「間に合ったーー。でも後一人ーーーー」
もう一人の刃は、尚世真王に届かなかった。
包帯だらけの男が横から槍を突き出し、最後の刺客を突き刺して片付けたのだ。
淀橋「酒弟(喜屋武)ーーーー!」
喜屋武「背中に穴が空いてても、これくらいは出来るんだぜ」
淀橋「また血が出てるぞーー。休めよ」
喜屋武「寝てらんねーよ。俺の代わりに寝てていいよ、四兄(淀橋)」
淀橋「それではお言葉に甘えて……ってならないよ。流石の僕も寝ないよ」
そこに山田が駆け寄ってきた。
山田「大丈夫ですか?」
淀橋「やばいよーー」
山田が顔を曇らせる。
しかし、山田は那覇方面から上がった1本の煙を見て、ニヤリと笑った。
山田「少しだけ守備を固めて時間稼ぎして下さい。後、敵はこれから逃げていくのですが、追撃はいらないですよ」
喜屋武も津村も、淀橋でさえもキョトンとした。
喜屋武「兄貴(山田)、良く見ろ。俺達は危機で死にかけているんだぞ!!」
山田「酒弟(喜屋武)、良く耳を澄まして聞いてみて下さい。風に乗り、聞こえますよ」
<不穏!那覇からの煙>
一騎打ちをする謝名親盛の側に、あわてて兵士が駆け寄る。
兵士「何者かの部隊が、我が部隊の後ろを突撃してきます。我が軍の後方は崩壊しています」
謝名親盛が、小島から距離を置く。
小島に警戒をしながら、後方を向く。
1500名ほどの精鋭が、王家軍の後方を蹂躙している。
後方の王家軍の兵士が悲鳴を上げて崩れ、逃げ惑っている。
弱兵を後方に置いた事が災いして、兵士は我先に逃げている。
謝名親盛は、背筋を走る悪寒を武人として否定できなかった。
謝名親盛は、目の前まで来た勝利の神から殴られたような衝撃を受けた。
喜屋武は驚く。
淀橋「あれはどこの軍ですか? 兄者(山田)知っているのか?」
山田「あれは馬場信春殿の軍です。
若様に依頼すれば二千人は追加できるけど、必要になってから三ヶ月は見ないと間に合わないって言っていたでしょう?」
喜屋武「なぜこんなに良いときに来れるのか?」
山田「馬場信春殿が来れる日に、この決戦の日を合わせたから来れるのですよ。こちらの内情は糸満砦の漁師に頼んで、博多に手紙を届けてあります」
淀橋「そしたら那覇砦も」
山田「そうです。我々の対応で手薄になっているだろう那覇砦は、馬場隊で占拠してもらっています。我々を助けに来てくれとも書いてありますよ」
謝名親盛「全軍、王宮に撤退させろ。軍をまとめろ。
おい、お前も名乗れ。命拾いしたな」
小島「俺の名は小島弥太郎だ」
謝名親盛が、負け戦であるにもかかわらず颯爽と王宮に撤退して行く。
さしずめ、軍は負けたが自分だけは負けていないと思っている。
小島は皆と合流するため、一旦後方に下がる。
小島「賢弟(山田)、追撃戦に入るぞ」
山田「兄者、追撃戦は不要です」
驚く小島兄弟。
大助「何故だ。追撃したら戦果が出るぞ」
山田はニヤリと笑った。
山田「……急ぐ必要がないんです。まずは、馬場殿や我が友、河合と合流しましょう」
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