第305話 1540年 10歳 亡命王子は琉球王国の革命出来るかな・最終戦(34 糸満砦で王が立つ日)
< 戴冠式 >
淀橋は三日続けて寝る時もあるが、起きている時は三日続けて起きる時もある。
今回、三日続けて起きるパターンだったので、兄弟で驚いていた。
戴冠式の準備でてんてこ舞いだ。
淀橋「寝る暇が無い」
山田は、淀橋の働きに感心する。
細かい所にも気付き、戴冠式で異常事態が生じた場合にも応じて、複数の計画案を立ててある。
そして戴冠式は、糸満砦の近くの広場で行う事にした。
近くの村の者を、出来る限り呼ぶ。
戴冠式の当日の朝は、雲一つない晴天に恵まれた。
小島兄弟や李超も正装している。
尚世真王子は、緊張した面持ちで現れた。
淀橋「この近くの村人は皆、新しい王の誕生に期待しています。必ず上手く行きます。お願いします」
尚世真は、即席で作られた二メートルほどの高さの壇上に向かう。
壇上に上がる直前、尚世真の足が一瞬だけ止まった。
だが、その背を押したのは――民の期待だった。
尚世真が壇上に登る。
これを見守る按司、越来賢人。
城間親照や小島兄弟達。
一際熱い声援を送る三女すみれ。
<緊迫!新しい王の宣言>
尚世真「皆は誰が王となっても変わらないと思っているだろう。私は皆に耳を傾ける。
この国は今、争いと不安のただ中にある。
按司も、商人も、民も、皆が苦しみ、皆が迷っている。
その苦しみを、私は見て見ぬふりはできない。
私は誓う。
この国から、恐怖を終わらせる。
この国から、飢えを終わらせる。
私は誓う。
按司たちよ、商人たちよ、民よ。
あなたたちの声を聞き、あなたたちの苦しみに寄り添い、
あなたたちと共に未来を築く王となる。
そして――
私を支えてくれた者たちに、深く感謝する。
命を賭して私を守った者。
私を信じ、共に立ち上がってくれた者。
共に歩もう。
共に戦おう。
私、尚世真、ここに王となる。
皆の未来のために」
一瞬の静寂の後、万雷の拍手。
誰もが口々に尚世真王を称える。
城間親照、越来賢人が涙ながらに皆と一緒に叫ぶ。
城間親照・越来賢人「尚世真王、万歳!!」
二人は、長く続いた恐怖の時代が終わるのを確信した。
子供が歌を口ずさみ、大人達も歌い出す。
村人も、商人も、兵士も、按司も。
「風吹けば 波が笑う
古い船は もう疲れた
新しい風 どこから?
空がひらく 海が呼ぶ
海の向こうに 光があるよ
怖がらないで 手を伸ばそう
昨日の王より 明日の夢を
みんなで行こう 新しい島へ」
皆、童歌として広めたハズの歌を、国歌のように歌う。
一人、違う歌を歌う者がいる。
三女「王子 王子 好き好き。笑うと 胸が どきどき。刀より 強いの その目線。私の心を 切っていく」
次女「こんな感動的場面で何歌っているんだ」
長女「そうよ、私も感動して泣いてたのに引いたわ。感動返せ」
三女「私も感動したからつい、テへッ」
次女「バカでしょ」
< 木板新聞 >
山田は漁民から、博多に出していた手紙の返信を受け取り、ニヤリとする。
山田は糸満砦に戻り、淀橋と話す。
山田「寝弟提案の木板新聞の反響すごいんだろ」
淀橋「そうです。琉球王国の各村に文字を読める人を雇いまして、各村に尚世真王の言葉や現在の王政批判を書いています」
山田「やはり琉球王国だと、首里や那覇の一極集中だから地方に言葉が届かない。皆、情報に餓えている」
淀橋「そうなんです。地方ほど我ら尚世真王に期待しています」
山田「また兵士希望者も地方から続々来ているのだろう?」
淀橋「千人ほどですね」
山田「合計で二千に回復したね」
山田はニヤリとする。
山田「童歌も、でかかっただろう(笑)」
淀橋「国歌になりそうですよ」
<危機!王宮の焦り>
一方その頃、王宮にて。
尚清王は大激怒していた。
このところ全く眠れないため、強い古酒を深酒しては寝て、またすぐ目が覚め、イライラして誰かに当たるようになっていた。
尚清王は毛国鼎摂政に、また大激怒していた。
尚清王「賊軍の王を僭称するヤツが、王を自称し出したというではないか。大逆罪であろう。王府将軍は何故糸満を攻めない? ヤツは今、ただ飯食いだぞ。これで攻めないならヤツをクビにしろ」
毛国鼎摂政「私も再三再四出動を言っているのですが、王の言葉を伝えます」
一方その頃、王府将軍、謝名親盛は王からの使者の言葉を聞いていた。
謝名親盛(これだから文官はイヤなのだ。ヤツらは那覇か王宮を必ず攻める。那覇を攻めてくれるのが最上だ。那覇の守備陣は三重備えだ。こちらの守備陣を崩す間にヤツラは兵士を減らす。王宮を攻めてくれるなら背を討てる)
謝名親盛の所に兵士が飛び込んで来た。
兵士「偵察部隊から報告が来ました。賊軍主力が首里方面へ向かっています!」
謝名親盛「時は来た。賊軍は王宮に向かっている。賊軍の背中を討つぞ」
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