第278話 1540年 10歳 亡命王子は琉球王国で革命が出来るかな(7 王子の決断、按司の砦で試される)
< 按司・城間親照の砦 >
城間親照の砦の後ろは崖である。
崖の下十五メートルは海となっている。
しかしながら、崖の下には小舟が三隻ほど引き上げることが出来る、小石だらけの小さな浜があった。
深夜二十三時。
黒子副隊長・大谷、他十五名が崖下の浜にかろうじて集合する。
わずかな衣擦れの音が、波音に消える。
誰一人、無駄な音を立てない。
全員黒づくめの衣装だ。
手首には鉤爪、足元は鹿革の靴。その先端には三角の鉄片が付けられている。
五名が松明を持つ。
だが通常の人間には真っ暗で、これで崖を登るのは不可能であろう。
しかし黒子全員が、夜目が異常に利くよう北爺から訓練されている。
大谷副隊長が、崖をヤモリのようにするすると登る。
違うルートから木杉付子も登る。
二ルートから登ることで、全員の短時間での登頂を可能とするためである。
大谷、木杉付子の二人がともに登頂に成功し、各自ロープを立木にくくりつけて崖下に垂らす。
無論、ロープが擦り切れやすい所には、黒子特製の当て木が当てられている。
合計四十五分で、黒子全員が崖を登った。
次に、砦内へ侵入して小島隊長達を呼び込むため、裏門を確保しなければならない。
表門の警備の制圧は、小島隊長達を迎え入れてから黒子で始末する事になっている。
山田からは、不測の事態に備え、出来る限り殺さず捕縛するよう指示が出ていた。
塀の高さは三メートルほど。
組み立て式の梯子で登り、塀上部にロープを結びつけて降りる。
最後の人間はロープを外して飛び降りるが、先に下に降りた人間が受け止める。
崖下へのロープや梯子は、黒子の内一人が残って片付ける。
さらに、不測の事態が生じた時は特別な笛で知らせる手筈だ。
<緊迫>
大谷が裏門へ行くと、想定より少なく二名であった。
裏門に五名、巡回捕縛に十名――黒子は二手に分かれた。
巡回警備組は、見つけ次第拘束し、その後に表門も確保する。
裏門を警備している者達は、本土の戦が多い砦の警備とは異なり、緊張感はほぼ無い。
寝ぼけている二名を猿ぐつわで黙らせ、目隠しをする。
裏門に入って来た最初の人間は小島だ。
次に李超、そして王子が続く。
王子は緊張気味だ。
しかし、その足取りに迷いはない。
王子の後ろでは、警備という仕事モードと恋モードを忙しく行ったり来たりしている三女がいる。
続いて山田や大助、喜屋武やその他が続き、兵士五十名も連れて来ている。
近習は別棟で休んでいるので、大助が兵士三十名を連れて寝ている者達を捕縛しに行く。
小島が大谷に言う。
小島「城間親照はどこにいるか?」
大谷「もう少々お待ち下さい」
五分後。
木杉が大谷の所に来た。
木杉「城間親照の寝室を見つけた。奥さんとグースカ寝てる。警備はいない」
王子「寝室に行こう」
三女「はい! 待ってました。この瞬間」
三女は顔を真っ赤にし、ムフフ笑顔となる。
完全に勘違いしていた。
長女と次女が、あわてて三女にツッコミを入れた。
王子は気づかない。
ただ、真面目な顔をしていた。
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