第276話 1540年 10歳 亡命王子は琉球王国で革命が出来るかな(5 首里は危険すぎるぞ)
< 首里 裏街道 >
一行は裏街道に入る。
腐った魚の匂いと、酒と血の混じった臭気が漂う。
喜屋武はその辺のチンピラに金を渡した。
喜屋武「おい、ここに役人が来たら叩き伸ばしてくれ。そしたらこの倍の金額をやろう」
チンピラはまず、相手が強いか弱いかを判断する。
弱ければ目の前の人間を叩き伸ばして金を巻き上げるだけだ。
しかし目の前の喜屋武に逆らうのは得策ではなく、逆らえば自分がぶちのめされるだろう。
よってチンピラはウンウンと頷く。
チンピラ「わっかりましたーー」
喜屋武「ここらで顔役っていうと今誰だ?」
チンピラ「あーその人ならそこで喧嘩してますよ」
喧嘩と聞いて、喧嘩が好きな喜屋武、小島、李超が喧嘩を見に行く。
状況は、大柄な男一人に対して三人が短刀や刀を持っている状況だ。
こういうのが好きな小島と李超が大柄な男を助けに入ろうとすると、喜屋武が止めた。
小島「酒弟、どうした? 珍しい」
喜屋武「まぁ見てて下さい」
<裏街道の乱闘>
大柄な男は、素手なのに余裕だ。
大柄な男は近くの男の足の甲を思い切り踏む。
男の足の甲の骨が折れ、近くの男の動きが止まる。
大柄な男はその瞬間、その近くの男の鼻を目掛け頭突き一発。
鼻がめり込み、血が派手に吹き出す。
短刀の男と刀の男が残る。
二人は「このヤロー」と大柄な男に同時に斬りかかる。
大柄な男は刀を持つ男の方へ、鼻血が出ている男を掴み投げつける。
刀を持つ男が地に倒れる。
大柄な男がジャンプして、その倒れた男の顔を思い切り踏みつける。
骨が折れる鈍い音が裏路地に響いた。
男の悲鳴がする。
大柄な男「もう逃げてもいいんだぞ、チンピラ」
チンピラ「逃げるかーボケ、やったらー」
と短刀を持ち、大柄な男の腹へ短刀を突き刺そうとする。
大柄な男は短刀を避け、そこへ男の両耳を掴み、男へ膝蹴りをして勝負有りだ。
三人とも戦闘不能である。
喜屋武「おい比嘉仁喜」
比嘉仁喜「兄貴じゃないですか? どうしたんですか?」
喜屋武「王子、兄者紹介するよ。俺の弟分の比嘉仁喜だ。昔からの暴れ者だ(笑)」
比嘉仁喜「(笑)おい兄貴やめてくれ。俺はもうここいらを仕切る親分になったんだぜ」
喜屋武「そしたらあの喧嘩はなんだよ。親分がする喧嘩じゃないぞ」
比嘉仁喜「俺の縄張りは俺が見回りをしたいのだ。そしたらよその組の奴らがでかい顔しているから、のしてやったのさ」
二人が話をしていると、強面の連中が刀やら短刀やら持ってドタドタ走ってきた。
皆、喧嘩慣れした目をしている。
「親父大丈夫ですか?」
比嘉仁喜「ほらな、俺が親分だろ。おいお前ら」
比嘉仁喜は子分の方を見る。
比嘉仁喜「いつも話しているだろ、俺の兄貴分喜屋武天喜だ。喧嘩が強いぞー。酒癖は最悪だから酒は飲ませられないけどなガッハッハ」
小島兄弟「確かに ウンウン」
山田が喜屋武に促す。
喜屋武「追われている、みんなを助けてくれ」
比嘉仁喜「兄貴は、また酒飲んで暴れて飲み屋をぶっ潰して、飲み屋の店主を半殺しにしたんでしょ? ダメですよ(笑)」
喜屋武「違うよ、積もる話もある」
比嘉仁喜「俺達が使う隠れ家に行こう。そこなら安全だ。見張りも立たせる」
<隠れ家での交渉>
隠れ家とは、使われなくなった倉庫だ。
ボロボロの廃屋で、誰も入ってこないだろう。
その隠れ家に移動した一同。
喜屋武が今までの経緯を全て比嘉仁喜に話す。
比嘉仁喜「兄貴には悪いけど、俺達は手伝えないぜ。若い者は今の王政に文句を言っても何も変わらないから黙っているだけ。期待しても裏切られるだけだから期待しないのさ」
皆シーンとする。
王子「比嘉仁喜殿聞いてくれ。確かに今までの王政は民の話を聞いていない。しかし私はいつでも聞く。民が王に対して文句を言えないのは、それは武力がないからだ。私には借り物であるが三千名の兵がある。資金も豊富だ。しかし、私に足りない物がある。それは貴方達民衆の支持だ。改革への熱い思いだ。比嘉仁喜殿、貴方の思いを私にくれないか?」
そう言って尚王子は比嘉仁喜の手を握る。
比嘉仁喜は尚王子と握手した瞬間、尚世真から濁流のようなエネルギーが入ってくるように感じた。
熱情だ。
比嘉仁喜は感じる。
この王子、嘘をついていない。
こんな目で見られたのは初めてだ。
比嘉仁喜「俺は子分が四十人いる。あんたが王になったら俺達に何を約束してくれるのかい?」
王子「望むのであれば正規兵でどうだろう? 皆腕っぷしに自信があるんだろ?」
比嘉仁喜は利と情の両面で考える。
利は、俺も含め子分全員が正規兵になれるならお釣りがくる。
情は、兄貴分の喜屋武と一緒にどでかいことをしたい。薄汚い人生で一花咲かせたいのだ。
比嘉仁喜「王子直属の兵士にしてくれ。俺はあんたの命令なら聞くが、他の奴の命令など聞きたくない」
王子「約束しよう」
比嘉仁喜「わかった、俺達は王子に協力する。俺は、前から喜屋武の兄貴とどでかい事をしたかったんだよ」
喜屋武「俺もだぞ兄弟、飲むぞ」
比嘉仁喜「(真顔)いやそれはちょっと止めて下さい!!」
愛すべき弟分が酒の誘いを真剣に嫌がるので、悲しい顔をする喜屋武。
それを見て小島達兄弟は、内心俺達が喜屋武の相手してやるからなと、ウンウン優しく見守っている。
比嘉仁喜が報告に来た若い者から話をふんふんと聞く。
比嘉仁喜「首里は危ないぜ、琉球の第二の都市那覇を先に抑えよう。俺の兄弟分が那覇にいる」
那覇は物流と金の中心だ。
押さえれば首里の喉を掴める。
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