第274話 1540年 10歳 亡命王子は琉球王国で革命が出来るかな(3 革命前夜、那覇港で揉め事が止まらない)
< 那覇港 >
長尾家の西洋帆船八隻が、那覇港に着いた。
当時の那覇は、琉球の第二の都市である。
貿易港・商業・倉庫・外国人居留地が集中していた。
西洋帆船から小型艇に乗り換え、王子と小島隊長が琉球の地に降りる。
先に手続きのため、淀橋は上陸していた。
【首里(王城)】
(王府・政治)
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| ※首里→那覇は陸路で近い
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丘・森 |
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【那覇(港町)】――――
(商業・倉庫)
王子は、初めて踏む琉球の地に感慨深げである。
――その目に宿るのは、鋼の意志。燃える決意。
五島列島で育った王子にとって、琉球は初めての土地だった。
王子は深く息を吸い込み、気合を入れる。
その横で、小島隊長が微笑んだ。
小島「王子、これからですね」
王子「小島殿。これが革命の第一歩である。共に実現しよう」
王子は、両親から聞かされてきた先祖の無念と、血の誓いを思い返していた。
二人が今後について話していると――
淀橋「長兄。現在の琉球王国、腐敗が酷いですよ」
王子は興味深そうに淀橋を見る。
王子「どのようにですか?」
淀橋「揉めたら目立つので大人しく払いましたけど、港では王国に払う正規の税金と、按司に払う税金が二重請求です。見れば、密貿易も役人に渡せば見逃される。他の商人に聞いた話では、治世も按司に逆えば死罪だそうです」
その言葉に、王子は自分が変革すべき理由を、はっきりと見出した。
王子「確かに、腐敗は進んでいますね。住民は、受け入れているのですか?」
淀橋「あきらめてます。言っても、行動しても、直るわけがない……って考えですね」
小島「決して王政に満足しているわけではない。だが、最低限の衣食住は保証されている。それを失うくらいなら、言わないでおこう……ということだろう」
王子も、我が意を得たりと頷いた。
小島「李牧様の話だと、ここで李牧様の右腕と合流する予定ですが……どちらにいるのでしょうかね」
<港のざわめき>
その時――
港の向こう、明国の船が停泊している辺りから、怒号が飛び込んできた。
中国語と日本語の悪口雑言が入り混じる。
どうやら役人と、明国の誰かが揉めているらしい。
「明国」という言葉に引っかかり、小島は山田に目配せした。
小島「……もしかしたら、李牧様の右腕かもしれない。賢弟、見に行ってくれ。場合によっては、治めてきてくれ」
山田は、騒ぎの中心へと急いだ。
しばらくして――
山田が、一人の男を連れて戻ってきた。
精悍そうな男で、李牧に似ている。
背丈は百八十センチほどある。
山田「王子。李牧様の右腕、李超様です」
李超「俺が李牧の弟、李超だ。兵士は五百名連れて来た。あんたが尚王子だな。俺が来たから、もう成功したも同然だ。よろしく頼む」
目つきは鋭い。
だが、王子に向ける視線だけは柔らかい。
李超は王子の手を掴み、ブンブンと上下させた。
小島「ここの隊長の小島だ。で、何であんな騒ぎになった?」
李超「聞け。役人が俺に賄賂を請求してきた。それでも俺は払った。だが、うちの部下がその役人を睨んだんだ。そしたら役人が、『その目つきが気に入らん』って殴りやがった。だから俺が、その役人を殴った。そしたら大騒ぎだ」
小島「それは――殴る」
李超は我が意を得たりと、ウンウン頷く。
李超「そうだろ? あんた、話が分かるな」
小島もウンウン頷いた。
小島「部下を守らないで、隊長なんてやれないよ」
李超「そうだ、そうだ。部下を守らない奴に、隊長をやる資格はない」
小島「よし、李超。お前、いい奴だ。歓迎会をやろう。李超、お前も酒が強いだろ?」
小島が酒を飲む真似をする。
李超「当たり前だ。小島も強いだろ?」
李超も胸を張って応戦した。
小島「飲むぞ!!」
李超「おーよ!!」
肩を組んで盛り上がる二人を、王子と山田が眺めている。
山田「兄者、李超様。役人を黙らせるために金をばら撒いてきましたが、今は革命という目的があります。目立つのはマズいです。早めに撤収しましょう」
<危機! 港での足跡>
そこへ――
黒子(城砦専門の攻撃特別部隊)の大谷副隊長が現れた。
大谷「小島隊長。役人が後を付けています。始末しますか?」
小島「スマン。目立たないよう頼む」
李超「うちでやらせようか?」
大谷「黒子も、木杉さん以外に十五名ほど連れてきています。早いですよ」
李超「うちも特殊部隊を連れてきてる。早いぞ」
張り合う二人に、王子は苦笑して言った。
王子「……先に手を上げた方で。大谷さん、頼む」
山田「王子、小島隊長、李超さん。この後、仕事の振り分け方針を決めておきましょう」
王子「そうだな。今後が楽しみな者たちだ。期待する」
話し合いの結果――
合計五十名ほどの兵士だけを残し、西洋帆船と李の船は一週間ほど外洋へ退避させることになった。
一行は、現状を確認するため首里へ向かう。
だが首里は、彼らを歓迎する場所ではなかった。
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