第270話 1540年 10歳 虎千代の6千人移住者の移動だぞ(⑤大宝寺晴時、ついに盗賊落ち)
<大宝寺家襲撃だぞ>
翌日。
6千人の移住者が酒田港を出発して、半日が経過した昼頃。
一行は山の中を通過することとなった。
志村は兵士の何人かを偵察に送りながら、6千人を進行させている。
兵士は前方、中間、後方と万遍なく置き、不測の事態に備えていた。
補給物資は後方に置く。
その補給の警備についているのは、虎千代、河合、数丸、胤早、胤剛だ。
ふいに、虎千代が山の方を睨む。
虎千代「師匠、聞こえたか。鳥の警戒音だ。不自然だ。少数の敵がこちらを狙っている」
河合には正直聞こえなかった。
だが、虎千代のカンの鋭さが河合を超えていることは、河合自身がよく知っている。
河合「虎千代はどうしますか?」
虎千代「敵は補給物資だけ少し奪って、すぐ逃走する腹だと思う。逃走するとしたら、こちらは馬だから平地には行かぬ。こちらの追手をまける山の中に逃げる方が自然だ。追手がまけて、隠れる所が多そうな所へ、俺と師匠達(胤早、胤剛)で行こうと思う」
河合「許可しません。兵士5人ほど追加するなら許可します」
虎千代はイヤな顔をした。
だが、虎千代が怪我したり死んだりしたら、怒られるのは河合である。
虎千代「……わかった。師匠達、行くぞ」
数丸「僕は気づかなかった。これで盗賊が来たら、この前の賭けは僕の負けで夕飯抜きですね。でも来なかったら、虎千代の負けですからね」
河合は考える。
案1。
盗賊が来た時、完全に追い返す。被害が少し出るかもしれない。
案2。
盗賊が来た時、ほんの少しの食料をやれば、盗賊はすぐ帰るかもしれない。その時の被害はゼロだろう。
案1か2だ。
だが、女子供もいるし、酒田港で潤沢な補給をしてもらったので、補給には余裕がある。
よって、案2とした。
少数の盗賊がこれなら満足するだろう量を、分けておいた。
無論、移動は続いている。
荷馬車の荷物を移動させただけだ。
盗賊が来た時、すぐに渡せるようにしたのである。
<緊迫>
10分後。
盗賊に成り下がった大宝寺晴時と家臣10人がやってきた。
無論、名前は名乗らない。
名乗りたくない。
何か既に警戒されている。
さて、どうすると大宝寺晴時が考えたとき――
河合「盗賊よ。大人しく引き下がるのであれば、この荷馬車の荷物をやろう」
見たところ、5人くらいで持てる荷物の量だ。
大宝寺晴時「わかった。乱暴しないでやるから、その荷物をこちらに投げな」
兵士達で荷物をぽんぽん投げる。
大宝寺晴時「ありがとうよ。ずらかるぞ、お前ら」
河合は感心した。
数丸「あいつ、やりますねーー」
河合「そうだな。虎千代の予想通りだよ」
大宝寺晴時は森の中を走っている。
大宝寺晴時「やったぞ、お前ら。あの憎たらしい長尾家の奴らに一泡吹かせてやったぞ。ワッハッハッ、愉快だ」
だが、後ろを付いて来ているはずの家臣達の返事がない。
大宝寺晴時が振り向く。
家臣達が、長尾家の兵士達に槍で刺され絶命していた。
大宝寺晴時「……嘘だろ」
大宝寺晴時が絶望する。
その目の前には、虎千代がいた。
<危機!>
虎千代「俺がいたことが不運だったな」
大宝寺晴時「お前のような10歳児に負けるかよ」
(俺はこんな所で終わる男じゃない)
大宝寺晴時が刀で虎千代に斬りかかる。
虎千代は十字槍で大宝寺晴時の足元を突き、突進を止める。
そして素早く槍を引き、大宝寺晴時の喉へ十字槍を突き立てる。
大宝寺晴時「……うぅ、俺は子供に負ける運命だったのかーー」
ガクッ。
胤早「勝負有りだ」
胤剛「こりゃ俺達、虎千代の部下になるかもな」
胤早「師匠(胤嵐)にどう言おう?」
<その夜>
その夜、夕飯抜きとなった数丸の元へ虎千代がやって来た。
虎千代「俺と夕飯を半分こするぞ」
数丸「いらないですよ。私が負けたのだから」
数丸「▪︎▪︎▪︎虎千代、それは半分じゃないですよ。私の方が多い」
虎千代「数丸、数弱いぞ。体重に合わせた量だぞ。お前は俺の体重の1、5倍だろう。合わせているんだぞ(笑)」
<直江津着>
六千人の移住者は、
安東家領地を出発して三か月後、直江津に辿り着いた。
俺は隊長の志村や虎千代をねぎらい、慰労会を開いた。
<緊迫>
慰労会にて
俺「志村、しばらく休憩してから家を開くための家来を集めたら良い」
志村「若様、ありがとうございます」
俺「志村の領地は七尾を考えている。しかし七尾は今、経済同盟国なので理由も無いのに攻める事が出来ない。もし攻めれば、次は自分達ではないかと、他の経済同盟国が疑心暗鬼になる。さて、七尾を攻めても良い理由があるなら良いのだが……」
志村「ございます。若様、お耳をゴニョゴニョ」
俺「おーそうなのか、そしたら色々準備しよう」
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