第265話 1540年 10歳 論功行賞だぞ
終戦から二日後、安東家攻略は大失恋後で落ち込み中の志村を除き片付いたので、論功行賞を行う。
① 呉狼
俺
「まずは新人ながら見事な働きだった呉狼。百貫だ」
呉狼が照れたような表情になる。
だが、すぐ自分を戒めるような表情になり、前に出てくる。
呉狼
「若様、感謝致します」
一言一言に重みがある。
俺
「俺は騎馬に乗り、敵の後方や中央へ単独で突っ込み、震天雷で戦場を変える部隊を作りたい。
呉狼、お前にその小部隊の隊長を任せる」
呉狼は一瞬、目を細めた。
俺
「震天雷は使い方によっては大きく戦況を変えられる。
例えば、意気盛んな敵の後方で震天雷を使えば、敵の士気を挫く事が出来るのだ。
呉狼、お前は戦術眼があり、度胸もある適任だ。
以後、呉狼雷撃隊を名乗れ」
呉狼
「承知致しました」
安田
「呉狼、もっと喜べ、新人のくせにいきなり隊長だぞ」
俺
「呉狼は安田とは真逆の性格だから無理だよ」
安田
「大丈夫です、教えます。
呉狼、こうやるんだぞ。
『ヤッター』」
そう言って安田は飛び上がって喜んだ。
俺は思わず額に手を当てた。
受賞したのは安田じゃない。呉狼だぞ。
② 小歳
俺
「小歳は新人ながら俺の命を救った。大手柄である。五百貫だ」
受賞していないのに島田や水斗が嬉しそうだ。
小歳は新人ながら親衛隊で可愛がられているのであろう。
小歳が照れながら前に出てくる。
小歳
「若様ありがとうございます。
これも日頃指導して下さる島田さんや水斗さんのおかげです」
島田と水斗がウンウンと頷く。
弟子の成長を喜んでいる姿を見るのは微笑ましい。
俺
「親衛隊はその性質上、手柄は上げにくい。今回の受賞で、また受賞しないといけないと重圧を感じるかもしれない。
そんな時は皆のこの表情を思い出せ。小歳、後ろを向いて見ろ」
小歳が後ろを向くと、万雷の拍手と歓声が上がった。
出席者
「よく若様を守ってくれた。感謝するぞー」
「本当にありがとう!!」
「酒をおごらせろー」
小歳は、胸の奥が熱くなるのを感じた。
自分が、確かにここに立っている。
小歳
「若様、私は親衛隊の一員である事に誇りがあります。
この命、若様に捧げます」
小歳は自らの席に戻ると、同じ親衛隊の仲間に背中をポンポンされたり、肩を抱かれたりしていた。
小歳が笑顔になる。
<空気が変わる>
③ 志村
俺
「次は志村だ。志村は前へ」
志村は、なぜ俺がという顔をして前へ出てくる。
俺
「志村は檜山城の抜け穴を知る比内重義を見つけて来た。
それで攻城戦を優位に運べた。
その功績により五百貫を与える」
一拍が空く。
志村
「・・・・若様、申し訳ございません。抜け穴は比内重義の手柄であって私ではありません。よって辞退致します」
会場が騒然とする。
安田
「志村、お前が振られたから若様の優しさでの報奨だぞ、受け取れ」
安田の言葉に「やっぱりかーーー」で、また落ち込んでいく志村。
俺
「バカ、傷つけてどうする」
安田を小声で叱る。
俺
「それでは、この賞は撤回しよう」
会場が騒然となる。
どうするんだ? との声が聞こえてくる。
俺
「今度、安東家の元領地で移住者の募集をする。
そして移住者を越後と蝦夷地に連れていく。蝦夷地の方に連れていくのは十三湊集合で船に載せるだけだから簡単だ。
移住者は陸路で越後に移動する。
隊長は志村、お前に任命する。
この五百貫はその報酬の前渡しだ。受け取れ」
志村、戸惑う。
俺
「高木やお前の部下を五百貫で飲みにでも連れて行ってやれ」
高木が会場の後ろから大声で叫ぶ。
高木
「兄貴、俺達を飲みに連れて行って下さいよ」
志村
「若様、承知いたしました。ありがたく受領します」
志村が深々と頭を下げる。
俺
「安田も志村と飲みに行けば?」(小声)
安田
「イヤー振られた人と行くと場が暗くなるからなー」(普通の大きさの声)
俺
「バカ、志村の目の前だぞ」(小声)
安田は慌てて口をふさぐ。
だが、志村はズシーーーンと地の底に沈んで行った。
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