第217話 1539年 9歳 狂信者の暴走で蝦夷地が割れるぞ
大見金右衛門
「若様、次は私が報告させて下さい」
大見金右衛門は、苫小牧付近の森林を村の皆と切り開いていた。
大見金右衛門
「おーーい倒れるぞーー気をつけろーー」
大人三人が手をつないだくらいの太さと言えば、実感が沸くだろうか。
メキメキードッカーンと、物凄い音を立てて大木が倒れる。
この後が大変なのだ。
枝払いをして、玉切り(大木を運びやすい長さにする)を行う。
短いと運び易いが、長いと柱等に使える。
それで牛を使い、村に運ぶ。
問題は根なのだ。
木の根元を掘り、根と根元の表面に穴を開け、油を滴して焼く。
これでしばらく時間を置いて根が弱ってから、周りに穴を掘り、根の下に鎖を通す。
これを牛二頭で引っ張る。
やっととれるのだ。
テコを使い、大人五人と牛二頭で引っ張る。
牛の後ろ足は土だけを掻き、牛追いは二頭の尻を荒縄で叩く。
大人四人は顔を真っ赤にして、油汗を流して口を合わす。
「せーーーのーーー」
半分まで持ち上げた時――
大見金右衛門
「おーい、無理無理一度休憩入れるぞ、牛も潰れる、俺も潰れる。」
皆、肩で息をして手拭いで汗を拭き、水をガブガブ飲む。
牛にも水を飲ませる。
牛も嬉しそうだ。
ひと休みしている。
大見金右衛門が、そろそろやろうかなと内心思っていると、村人が話しかけてきた。
村人
「大見様、あの坊主の一団何とかなりませんか。アイツら大見様が禁止している森でも木の伐採するし、アイヌ村の近くで毒を流して魚を採っているんですよ」
大見
「なにーー!
あの森はアイヌが神聖としているから禁止だし、アイヌの川で毒なんてもってのほかだ、けしからん。
お前、こんな大事な事、もっと早く言えよー」
村人
「そうですねー」
大見
「そうですねーじゃないよーー。アイヌを怒らせてみろ、俺達の商売は終わりだよ、海産物も来ないし、毛皮も来ないで、俺は直江様から怒られるで良い事なしだよーー」
村人
「そうですねー」
大見
「そうですねーじゃないよーー、まったく。おい皆撤収で俺に付いて来てくれ、坊主の一団に説教しないといけない」
村人全員
「わかりました」
牛
「モー(俺がついてってやるぜ)」
<危機!坊主の一団>
大見が村に行くと、坊主の一団がアイヌの村にいた。
坊主の一団十人で、アイヌの男三人を袋叩きにしている。
大見が激怒して、坊主の一団とアイヌの間に入る。
大見
「どういう事だ、説明しろ」
坊主
「我ら本願寺の教えに逆らったので教えてやっただけです。南無阿弥陀仏」
大見
「嘘つきやがれ、集団で暴行して良い何て経典に書いてあるなら、それはどの経典で何枚目に書いてあるのか言ってみろ」
坊主
「我々は経典の本質に基づき行動しておる」
大見
「ほらみろ、言えねーじゃねーかー、嘘ついた事謝れよ」
言い合いをしている内に、また坊主の一団がアイヌの暴行を再開した。
大見、怒鳴る。
「おい、お前ら止めろって言っているだろ」
大見は背中に冷たい風を感じた瞬間、振り返る間もなく、鈍い衝撃が頭蓋を揺らし、視界が暗転した。
大見が意識を失う。
ついてきた村人が怒りをもって仕返しをしようとする。
村人の一人
「止めろ、まずは大見様を医者に見せる方が先だ。手伝え」
大見は牛の背に乗せられ、村に帰った。
(モー(俺が来て良かっただろ(笑)))
大見が気づいたのは二日後。
妻が涙ぐみ、
大見妻
「良かったーー、このまま目覚めないかと思ったーーー」
大見
「アイタター、あれからどうなった?」
大見妻
「あれからアイヌが坊主の一団に抗議したら、坊主の一団がアイヌの人を一人殺しちゃったのーー、アイツら頭おかしいよーー」
大見
「大変だー直江様に知らせないとーー」
大見妻
「大丈夫、あんたがやられてすぐ早舟頼んだから」
大見
「出来る嫁じゃねーかー」
大見妻
「でしょう(笑)」
村人
「大見様、直江様来られました」
直江
「あーそのままで良いぞ、一部始終細かく話せ」
直江
「深刻だな、まずはそのクソ坊主の一団を捕まえるぞ」
直江の兵士三十人が一斉に動いた。
坊主どもは念仏を唱えながら抵抗したが、数瞬で縄にかけられた。
坊主ども一団は、直江が近づくと、直江達に正義の雷が落ちると本気で信じていたらしい。
直江はこの坊主の一団を連れて、アイヌの村に行き、
直江
「この者は、我が支配地で殺しを犯した。よって、長尾家の法で裁く」
直江
「ただし――
この者が犯した罪は、
お前たちの神と掟を踏みにじったものだ」
「遠島に島流しとする」
「島流しとは水の恵みは雨だけで川のない土地で、作物も実らず、食べれる動物も少ない島にこの者達を置いてくる事を言う」
直江はアイヌの者を指差し、
直江
「お前は、そんな土地で生きていけるか?」
指差されたアイヌはクビを横に振る。
直江
「そういう罰だ、理解出来たか?」
直江
「アイヌの村長もその罰で良いか?」
村長
「その罰に異存はない。しかし、我が村と長尾家との約束は汚された。よって魚や毛皮の取引は継続するが、使って良いと言っていた土地は白紙に戻す。約束を違えたのは長尾家だ。そちらこそ異存はあるまい?」
直江
「ちょっと待ってくれ」
手練手管で村長を口説いたが、村長は耳を貸さない。
直江と大見は村に帰って来た。
大見
「直江様、申し訳ございませんでした。」
直江
「いや、これは誰でもこうなっていた。宗教確認はキチンとしていたが、アイツら嘘ついていたんだろ」
大見
「どうしますか?」
直江
「九島七朗を呼ぼう」
大見
「大丈夫なのですか?」
直江
「アイツは運を持っている。そして女にモテる。お前は女房を隠しておけ。女房が七朗に惚れてしまうぞ(笑)」
大見
「恋女房なので大丈夫です」
<緊迫!消えた信頼>
三日後、九島七朗が来た。
直江と合流し、九島が見舞い金や物資を受け取る。
直江
「村長の怒りは根深い。単なる物資では収まらなかったはずだ。」
九島
「後もう一押しですね。直江様は三日ほどお待ち下さい」
三日後。
九島が直江のもとに来た。
九島
「直江様、アイヌとの関係修復です。」
直江、驚く。
直江
「どうやったんだ?俺があれだけ押しても引いてもダメだったのに」
九島
「近くに私と仲の良いアイヌの村長がいまして、その村長と今問題の村長が血縁なのです。
それで私と仲の良い村長を間に立てて口説いてもらいました。」
直江
「おー、助かるぞ。
ありがとう。
九島、今日宴会やるから出席しろよ」
九島
「直江様、申し訳ございません、先のアイヌとの先約がありまして」
直江
「わかった。函館に帰ったら礼はする。飲みに行こう」
九島は笑ってうなづき、アイヌの村へ行った。
直江は近くの大見に話す。
直江
「若様が九島を大事にしろって言ってた意味がわかるよ」
大見は家に帰り、女房に一部始終話した。
大見
「九島モテるから女房を隠しておけって言われたのだけど、お前大丈夫だろうな?」
大見女房
「九島様モテるってわかるわーーー」
大見
「オイッ」
大見女房
「冗談よ、冗談(笑)」
直江
「そういう事がありました」
俺
「宗教問題は厳しいよなー。改宗しましたと言われるとどうしようもない。」
安田
「本願寺の悪口言わせましょうか? お前の母ちゃんデベソとか」
俺
「発想は良いけど、それ、改宗を決意した奴までドン引きするから止めろ」
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