第140話 1538年 8歳 論功行賞だぞ
前回は、
細川晴元が来訪した回だった。
その中で俺は、
将来必ず火種になる男――
三好長慶の危険性を指摘している。
<論功行賞>
1位は小島弥太郎。
千貫だ。
小島弥太郎
「若様、ありがとうございます。
最初に出会った時に頂いたこの鎧通しで首を切り、
若様との約束を果たしました」
俺
「おめでとう。
活躍は、遅すぎたくらいだ」
小島弥太郎
「若様、お願いがあります。
志村が家を起こすと聞きました。
私も、家を起こしたいです」
俺
「良いぞ。
ただ、小島弥太郎には揃えねばならぬ物が色々ある。
それは後で話そう」
<賑やかな面々>
俺
「二位は北爺からの推薦だ。
木杉付子、五百貫だ。
逃がしたかもしれない側室を、よく捕まえた。
側室に逃げられていたら、
今回の作戦も失敗していたかもしれん。
お手柄だ」
俺
「三位は黒子の北爺と大谷。
それぞれ百貫だ」
津村淳之介が木杉付子に近づく。
津村淳之介
「おめでとうございます。
俺のおかげですね(笑)」
木杉付子
「そうだよ、新人」
そう言って笑顔の木杉付子は、
また津村淳之介の尻を蹴った。
「僕も蹴って」
そう言って、尻を突き出した男がいる。
武芸大会で女に見惚れて逆転負けをした、
スケベ大助次郎である。
木杉付子も津村淳之介も、
スケベ大助次郎など存在しないかのようにスタスタ歩き出す。
木杉付子
「黒子の飲み会に参加させてやるよ、新人」
津村淳之介
「怖いなー。地獄の飲み会でしょ」
木杉付子
「飲み会だと北爺は優しいの。
その後は悪魔ね」
津村淳之介
「僕は逃げますよ」
木杉付子
「付き合わせてやんよ、新人。行くぞ(笑)」
取り残されるスケベ大助次郎。
その側を、忍者三人娘が通りかかる。
三女 菫
「だから、びっくりしたわよ。
木沢長政、
うんこする時にお付きの人五人にじっと見られながら
うんこひねり出してたんだから」
長女 葵
「汚な~~~~(笑)」
次女 楓
「あんた、それ見てたなら
木沢長政を殺して千貫を私によこしなさいよ」
三女 菫
「誰がやるか。
それより、人が用を足してるところなんて
見慣れてないから殺せないって。
殺せるのは大姉(夜雀)だけよ。
大姉は見慣れてるかもね(笑)」
スケベ大助次郎
「僕が毎日、目の前でするので見慣れてください」
三人娘、絶句。
三女 菫
「気持ち悪いんだけど。
何、この人」
長女 葵
「変態でしょ」
次女 楓
「死ねカス」
騒ぎになり、慌ててスケベ大助の世話係の空曹が駆け寄ってくる。
空曹
「皆様、お騒がせしてすいませんでした。
ほら、お前も謝れ」
空曹はスケベ大助次郎の頭を押さえ、
無理やり頭を下げさせる。
長女 葵
「わかった。
この人、黒田リンさんに接近禁止命令を出された変態だよ」
三女 菫
「じゃあ黒田リンさん呼んで来て、
こいつ蝦夷地に飛ばしちゃおうぜ」
次女 楓
「こんなのに関わっちゃダメよ。
死ねカス!!」
三人娘はそのまま立ち去り、
空曹とスケベ大助次郎だけが残された。
<人を育てる>
空曹は大きくため息をつく。
空曹
「なんでお前は、そうなんだ。
いつもちゃんとしろって言っているだろう」
スケベ大助次郎
「だって、しょうがないじゃないですか。
俺は女の子が大好きなんですから」
親指を立て、片目をつぶる。
白い歯が、キラリと光った。
空曹は思う。
――こいつ、本当に蝦夷地に飛ばすしかないな。
俺は空曹から報告を受けた。
空教(殺人教団)から、初の破門となったスケベ大助次郎。
本当に蝦夷地に飛ばして熊と結婚させようか。
……とりあえず、保留だ。
六時間後、菊姫が到着した。
十九時頃だ。
皆で慰労会を兼ねた夕食を取る。
俺は菊姫や宇佐美に、全体状況を説明した。
菊姫は戦場の話に慣れておらず、
新鮮だったらしく、次々と質問してくる。
俺は逐一、説明した。
菊姫
「私が、もし正室の立場で敵に捕まっていたら、
どういう行動を取るのが正解なの?」
俺
「一番の不正解から言うと、
正室が勝手に死ぬことだ。
一番の正解は、とにかく生きることに頭を使うことだ」
菊姫
「龍義様が、木沢長政の立場なら、どうしていた?」
俺
「時間が来ても、
そう簡単には人質を殺さないと読む。
最初に殺すとすれば家老、次に側室。
一人殺してから、最低でも三、四時間は空ける。
そうでないと、敵を自分の意図通りに動かせない。
だから俺は悪いが、家老の命は切り捨てる。
戦場に到着する二時間ほど手前で軍を休ませ、
三時間ほど休憩を取る。
それで体力は六割ほど回復する。
そうなれば、兵数は二倍。
負けることはない。
相手方の兵か大将を人質に取り、
正室、側室、子供と交換して和議を結ぶ」
鶴姫
「私と子供は助かるのね」
菊姫
「私も助かる」
宇佐美
「死ぬのは私ですな(笑)」
俺
「宇佐美なら、もっと上手くやる。
心配はしていないよ」
いつの間にか、
柿崎、馬場、雷蔵、風馬、水斗が集まり、
勉強会のようになって夜は更けていった。
夕食会の後、
俺は小島弥太郎を自室に呼ぶ。
隣には菊姫がいた。
俺
「夜分遅くにすまんな。
弥太郎が家を興すにあたり、足りないものは部下だ。
志村は高木という部下がいたから、
家を興すことを許した。
弥太郎には、
人を育てるということを意識してほしい。
そこでだ。
弥太郎に、一人育ててほしい者がいる。
……入ってこい」
大助次郎
「失礼します」
小島弥太郎は、目を見開いた。
小島弥太郎
「例の問題児ですね」
俺
「問題児だ。
だが、このスケベは戦闘力はある。
蝦夷地で熊と結婚させるのは惜しい。
このスケベを一人前に出来れば、
弥太郎には人を育てる能力があると見て、
人をどんどん付けていこう」
小島弥太郎
「若様、わかりました。
大助次郎よ。
今日から俺とお前は兄弟分だ。
俺はお前を弟として、厳しく躾ける。
若様、見届け人になって下さい」
俺
「わかった。
儀式を用意させよう」
こういう時でも、
大助次郎は俺の隣の菊姫をチラチラ見ている。
特に、顔のあたりを。
儀式が終わり、
小島弥太郎と大助次郎は退室した。
菊姫
「何あの人。
私の顔ばかり見てたわ。
気づかないとでも思っているのかしら。
女の人を世話してあげようと思ってたけど、
やめたわ」
菊姫は、はっきりとご立腹だ。
俺
「まあ、そう怒らないでおくれ。
国のために命を捨ててくれる、大事な兵士だ。
あんなスケベでも、大事にしないとな」
菊姫
「確かにね。
あのスケベをまともにしたら、
小島弥太郎は人を育てる能力があると言っていいわね」
俺
「だろ。
小島弥太郎にとって、
あのスケベは試練だろうが、頑張ってほしいな」
こうして、俺たちの夜は更けていく。
真面目な話をしている時は、
菊姫の乳母も、守役の安田も姿を見せない。
どこで、どうやって監視しているのか――
不思議なものだ。
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