308、出発と道中
「道中は俺とユリィで魔獣を倒す、まぁ万が一の時は頼む」
西門の下から出発して1時間ほどが経過した草原。
馬車の後ろに引かれる客室に座り向かいにはミカエルとユリィ、隣にヒスイの席順となっている。
間にある机にはこれからの道順がのった地図が広がり作戦会議が始まっていた。
「全3日の行程で一番危険なのは2日目の昼間に通るこの森だ」
ミカエルの指が落とされたのはアイラード領を少し外れた森。
どの国にも属さない危険地帯なら避けて通れば良いと思うが現実はそう簡単にいかない。
なぜならこの危険地帯が俺達にとって一番安全なルートだから。
他のルートは魔獣よりも厄介な条件が揃っている、盗賊、地盤、環境、天候。
「参加する中で俺たちが一番危険なんじゃないか?」
「弱きになるな」
俺の一言をミカエルに一喝され会議は続行。
「陛下からお前達が元素魔獣を倒したと報告を受けている、もしもの時は力を借りるぞ」
元素魔獣、おそらくアスト・キガスのことか。
まぁギルド長アインスから陛下は聞いたと言っていたから知らない方がおかしいか。
だが一つ引っかかる。
「なぁミカエル、その話をお前は信じたのか?」
「嘘なのか?」
「いや悪い、よく元素魔獣を倒したって聞いて信じられたなと」
こういう所を俺は尊敬している。
いくら陛下からの言葉でも元素魔獣を俺たちが倒したなんて誰も信じない。
もしくは何がズルをしたのかといの一番に聞いてくる。
だがこいつは違う。
「信じるもなにもお前が居ない間も情報は少なからず届いていた、ウェルスキュアであった当人不明の未曾有の魔力。他も不明な点が多い、それがお前を起点とした事なら俺の中で辻褄があう。何より兵団を出て行った時と顔つきがまるで違う。それこそ団長に似たものだ」
「そんな素直に褒められると少し照れるな」
「私そういう所好きだよミカエルぅ」
肩を寄せるユリィ。
「いつも近いんだよお前は!淑女としての嗜みをだな!!」
「聞こえないよぉ」
さらに距離を詰めるユリィと慌てて離れるミカエルで部屋は揺れる。
部屋が揺れるという事は視界が揺らぐ、それに伴い起こることとは。
「ごめんねぇ、ヒスイちゃん」
「いいえ……うっ」
風が心地よい木陰でヒスイの背中をさするユリィ。
ヒスイが乗り物に弱いのは知っていたがまさかこんなに早くリタイアするとは俺も配慮が足らなかったか。
時間には余裕があるしここで気分転換できれば良いが。
「おいアレス、あの子が本当に魔王にも匹敵する力を持ってるのか?」
「あぁそうだ、俺はヒスイのおかげで色んな強敵と戦えた。ヒスイは特別だ、もしもの時があれば何よりもあいつを守ってやってくれ」
「何よりって俺たちの命よりもか?」
「……頼めるか」
ミカエルの手が俺のかたを叩く。
「馬鹿いうな、俺はもちろんお前らの誰一人も殺させやしねぇよ。そのために俺は底辺から這い上がってきたんだ。それにユリィもいる。不滅響奏とかいう連中にも遅れはしない」
「そうだといいんだが」
ヒスイの顔色が明るくなり道をすすむ。




