307、過去と事実
ゆすられる感覚に目が覚めると視界いっぱいにこちらをのぞき込む赤髪の女の子がいた。
「おはようアレス、いよいよ剣聖会合ね。一緒に頑張りましょ!」
笑顔が眩しいヒスイ。
およそ1年の付き合いだがこんなにもハイテンションのヒスイを見るのは稀。
それに朝起こしに来るなんて明日世界が滅ぶのかと思う程にありえないこと。
何か大きな失態をしたのか?
「おはよう……そうだな、頑張ろうな」
たどたどしい言葉で起きる朝。
ミカエルとユリィは出立する西門で待ち合わせ。
そこまでは国内馬車で移動する。
「この生地ってなんなのかしらね」
昨日剣聖会合に行くために支給された白と金線のローブを羽織り姿見の前でくるくる回るヒスイ。
「まぁまだ見ぬ元素魔獣って所だろうな、それも一式ときた」
「王政も太っ腹ねぇ」
俺はプレッシャーで吐きそうだと言うのにこの娘は。
余計なことを言って心労を負わせたくないので黙っているがここまでの装備は普通では有り得ない。
ではなぜ俺達の2人にこんなにも大層な装備が支給されるか。
それは今回の任務がそれ相応に危険ということに加えデュリナミス王国との共同戦線だと言うこと。
恐らく2カ国の出資。
「共闘するデュリナミス兵士は強ければ良いけど……」
未確定な要素を作戦に組み込む程愚かなものはない。
となると俺達、ミカエル、ユリィの戦力でー地の封緘ーの奪取、裏切り者の剣聖と相対しなければならない。
「なぁヒスイ、今回不滅響奏が絡んでると思うか?」
「それはまぁね、ユウラちゃんの事を考えると是が非でも地の封緘が欲しいだろうし。最悪の場合、ボスのレーヴェンって奴が出てきてもおかしくないわ」
闇ギルド不滅響奏のボスと思われる名前レーヴェン。
あの羊飼いゾラよりも強いとなるとこの世界で太刀打ち出来るのは限られる。
俺達がそれに該当するかは自信がない。
「起源魔獣3体の力を手に入れれば世界を支配出来るだったか、また面倒なことをあの男は持ってきやがる」
「でもその男が居ないとユウラちゃんが助かんなの。割り込んなきゃ」
もちろん割り切ってる、でも最初にあいつと会った地下を見てしまってはどうしても許せない。
ユウラはヒスイの光魔法があって今の姿になっているが、それが無ければ意思もなく戦う人形だった。
その事実がどうしても飲み込めない。
「ヒスイが居なきゃユウラは助かんなかった、そうだろ?」
「まぁ確かに光魔法で戻ったけど、それはそれ今は今だよ。今見るのはユウラちゃんを守る地の封緘と裏切りの剣聖でしょ?」
「……そうだな悪い。行くか」
ミカエルとユリィが待つ門へ向かう。




