第44話 よく似た男
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ミクの推理が佳境に差し掛かろうという時、俺は気づいた。「運命の輪」の巨大ルーレットの下から、青白い手がニュッと飛び出してくるのを。
無論、ミクに何をされるのか完全にわかったわけではない。だが、何かをされることに気づいた俺は、咄嗟にミクを横に突き飛ばし、代わりにその“攻撃”を受けた。
「おや、防がれてしまいましたか。ですが推理ショーはもうそのあたりで結構ですよ。第一幕はこれにて閉幕。続く第二幕は皆さんお待ちかねの、拷問殺戮ショーです」
壁に身体を叩きつけられ、背中の痛みに耐えながら、何とか顔を起こした俺は、自分を突き飛ばした奴の顔を見て、思わず声を漏らした。
「カガネ……?」
それは水の都グレイブル憲兵団の前団長を事故に見せかけて殺害し、その後を継いだ妹を裏で操り、事実上の傀儡政権を作り出した男。
グレイブル副団長、カガネ。
奴の顔にそっくりだった。
だがそんなはずはない。あの男はイツキの剣に粛清されてグレイブルのダンジョンで息絶えたはず……。
「おや、私の弟のことをご存知ですか? ですが心外ですね。あのような出来損ないの弟と間違えられるとは。私の名はクガネ。賭博の町メローヌ最大のカジノ「運命の輪」のオーナーにして“天命の矛先“の一槍を担っております。以後、お見知りおきを」
「ヘブンズ……え?」
聞き慣れない単語に戸惑いを隠せない。
「おやおや、まさかあの愚弟は自分が所属する組織の紹介すらしなかったのですか? まったくどこまで使えない弟なのか、もしくは──」
ビュンッ!
「ッッ⁉︎」
俺は一瞬のうちに飛んできた三叉槍をすんでのところでかわした。
「死に往くものに敢えて教える必要もないと考えたのか、ですね」
男の行動に俺は戦慄した。
それは奴の槍を投げる動作が自然過ぎて反応出来なかったこともそうだが、何より、まるで会話の最中に髪をいじるように、人を殺そうとすることができるその精神に、だ。
まずい。ここは──
「ミクさん! ムツミ! 撤退するぞ!」
「おおっと、そうはさせませんよ?」
クガネが指を鳴らすと、どこに隠れていたのか、赤いローブに身を包んだ奴らがゾロゾロとあわられ、あっという間に俺たち3人は包囲されてしまった。
「寄せては返す波をもって、万物をあるべき場所へと渡さん。”バウンド“」
俺の足元に突き刺さっていた槍が吸い寄せられるようにクガネの手元へと戻っていく。
「なるほど、そのスキルでルーレットのボールを吸い寄せて出目を操作していたんですね……」
「ええ、またしてもご名答ですよお嬢さん。大方、台詞を聞き分けている時にテーブルの中の私の詠唱の声を聞いていたのでしょうが。知られてしまった以上、あなたたちを生きて帰すわけにはいきませんね」
またもクガネが指をパチンと鳴らす。
俺たちを取り囲むローブの男たちが一斉に杖を構える。その数6人。奴らが同時に魔法スキルを放てば俺たちはひとたまりもない。
「では第二幕もこれにて終幕」
クガネが指を構え、6本の杖が振り上げられた。
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