第45話 天命の矛先
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室内の人間の視線がクガネの指先へと集まる瞬間、俺は全力で前方へと疾駆した。
クガネは俺の狙いに気付いたのか、慌てて三叉槍を振り回そうとするが、コンマ数秒遅い。懐に入ってしまえば長物なんて飾りにしかならない。俺は槍の柄を掴むとそのまま背負い投げの要領で奴を地面へと叩きつけた。
そして急いで起きあがろうとするクガネを後ろから羽交締め(はがいじめ)にし、その首元に短刀を突き立てる。
「武器を捨てろ。さもなくばお前らのリーダーを殺す」
束の間の沈黙の後、ローブの男たちはスキルの詠唱をやめて杖を下ろし、足元へと捨てた。
それを見て俺は内心安堵する。
正直、これは賭けだった。
まず、相手が完全に油断している状況だとしてもクガネを無力化できる確証はなかった。それに、クガネが人質としての役割を果たしてくれる保証もなかった。
こちらは天命の矛先? の一槍? とやらがどれだけコイツらにとって重要かなんて知る由もないのだ。
ひとまずうまくいって良かったが、安心してもいられない。むしろここからはより慎重に行く必要がある。
意識的に目に力を込めて、多少なりとも毅然とした態度をつくる。
「全員、両手を頭の後ろで組め。ミクさん、ムツミ。悪いけど落ちた杖を回収してくれ」
「わかりました」
「えー、ボクもー?」
「ムツミ、頼むから状況考えて」
「もー、しょうがないなー」
ローブの男たちがおとなしく指示に従うのを見て、ミクとムツミが杖を集めていく。
「ククク、これは一杯食わされました」
変なことをしないように首を絞めつつ、短刀を首元に近づけるが、クガネは笑うのをやめない。
「しかし、甘いと言わざるを得ませんね。すぐに命を取らないなんて。まさか、死にかけてなお、敵である我々に情けをかけているのですか?」
「うるさい。ここから無事に出るために利用しているだけだ。余計なことを喋るな」
やがて二人が敵の武器を回収し終えたのが見えたので、声をかける。
「よし、ありがとう。次は出口だ。こんなところ早く脱出しよう」
クガネを立ち上がらせる。こちらの安全が保障されない以上、無事に出られるまでコイツにはついてきてもらう必要がある。
「わかりました──って、あれ? あれ?」
ミクがカジノの出口へと向かうが、ノブを回してもドアが開かないようだ。
まったく抜け目がない。どうやら俺たちを包囲した際に退路を絶ったらしい。
「おい、ドアの鍵はどこだ」
「さて、誰が持っているのやらどこへしまったのやら、皆目見当つきませんな」
「コイツ! 死にたいのか!」
「たとえこの命消えようとも、その魂は運命の女神デスティネル様のもとへ行くのみ。そこに恐怖などありはしません。我々はただ、欲望を集めるのみ。ただ、そのための突き匙であればいい。女神に栄光あれ(グローア・ラ・ディエース)!」
「何を言って──」
「‼︎ ハジメさん! その人から離れて!」
「なっ──」
ミクの言葉に反射的にクガネから身をひいたが、次の瞬間、俺の身体は宙を舞った。
またしても壁に叩きつけられ、ぐわんぐわんと揺れる頭をなんとか動かす。
言ノ葉によるスキルの詠唱? それらしい言葉はなかったはずなのに。
「召される前に教えてさしあげましょう。女神デスティネルから賜ったスキルであれば、主への賛辞を唱えるだけで発動ができるのです」
「女神デスティネルからのスキル?」
どういうことだ。スキルは勝利の女神アフタエルから人類に授けられた物ではないのか?
「アフタエル? あんな厄神が作った平凡なスキルと一緒にしないでいただきたい。世界にただ一つの固有スキルは女神デスティネル様がお作りになったのです。私のためだけにね」
世界にただ一つ? 固有スキル?
それってつまり──
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