tame10 理由
「危ない危ない、陽光の娘が大剣だったら死んでたよ~」
最初は敵対状態かと思ったがちらっと見えたアイコンが示す状態は青、中立だ。
腿まで伸びた紫の髪、言動とは裏腹にクールな印象を受けるキリっとした顔立ちに王族が来てるような紫のドレスを身に纏っている。何より目立つのが背中から生えてあるだろう大きな翼、というかさっきのあれは流石に冗談だよね? 爪か何か当てただけだよね?
「でだ、そのサキュバスがなんの用だよ?」
ティアが俺にヒーリングオーラを掛けてHPが回復していく、それをを眺めながらサキュバスに問いかける。
「サキュバスと男、出会ってしまった以上なにもないわけが無く~……」
「ロボ」
「真面目に答えろオラァ!」
ふざけたことを言いだしたサキュバスに対してロボに攻撃命令を出す。ロボはすぐにその太腕でサキュバスを叩く。
「痛い痛い!?」
目に見えてるサキュバスのHPは既に9割削れている。さすがにこのままではサキュバスから話を聞く前に死んでしまう
「まぁとりあえず食っとけ」
とりあえずHP回復アイテムであるグミをウィンドウを操作して取り出しオブジェクト化、それを親指と人差し指で渡そうとしたら……
「あむ、ちゅるっ……じゅるるっ」
あろうことか俺の指ごと咥えて吸い出した、
「っ!?」
慌てて指を口から抜いたが変な声が出る、こいつは何がしたいんだ。ルーさんも右手で頭を押さえて呆れているし……話に進行が見られない賭けるか。
「ロボ、姉御、入った来た方の出入り口に立っていてくれ、ティアとルーさんはこれから進む方に立っていて欲しいんですが……」
「了解ですご主人」
ロボと姉御は無言で頷くと指示された方に移動する、ティアとルーさんも少し訝しんでいた様子だが移動してくれた。
「さってと……」
ここからが勝負だ、何かのクエストならこいつとの会話を上手く進めることで何かしらのクエストが発生するはずだ、仮に罠だとしてもファミリアとルーさんを巻き込む可能性はこれで低くなった。
「どうしてこうして欲しいと思ったことがバレたかな?」
さっきとは打って変わって真面目なトーンになるサキュバス、まぁ流石にバカキャラの演技が露骨すぎだったというか……
「説明しなきゃいけないか?それより本題を話せ」
と返すと
「……最近一族全員が同じ夢を見るの、銀髪の男の子かも女の子かも分からない人間に『邪神につくか魔王につくか、選択の時は近い』って言われる夢を」
……それってゼウスじゃないか?
「邪神、っていうのはヴァルガだと思う。そして魔王は最近噂に聞く白い龍を従えた貴方の事だと思ったの」
魔王、なんて柄じゃないんだけどなぁ。
「決定打は貴方と貴方のファミリアの雰囲気、正直見てて羨ましかったわ」
サキュバスはそう言うと俺に抱き着いてくる。
「アタシは一族代表として貴方に交渉しに来た、私たちと契約してここから連れ出して欲しい」
合点は言った、だが疑問が残ることが少しある
「いくつか質問していいか?」
「答えられる範囲でなら」
「まずは俺を魔王と呼ぶ理由だ」
ここが本当に気になる、俺のファミリアは確かに強いのが結構いるが俺自身は本当にそこら辺の中間層に燻るバッファーがいいレベルだ
「既に大勢のファミリアを従えているその現状を見てたらそう呼びたくなった、じゃダメ?」
表情は分からない、だが抱いてくる腕に力が籠り始める。
「二つ目、ルーさんのメイン武器が何故双剣と大剣と知っている?」
「なんでか分からないけど"陽光の娘"って言われているプレイヤーの情報を私達は知識として持っているの、これだけは上手く説明できないの……」
ここがIDだとすればここをルーさんが何度か攻略していて、その時の戦闘記憶が残っている……うまく言葉にできないけど。
「……最後だ、なぜあんな回りくどいことをした」
話は通じる、だがこいつがまともだと思えれば思うほど最初の行動が異常に見えて仕方ない。
「……真面目なサキュバス、なんてキャラじゃないでしょ? サキュバスは常に男襲う事しか考えてないような奴じゃないとね?」
その答えに思わず噴き出した。




