tame8 スキル作成
牧場が出来てからテイマーが大分注目されるようになってきた、原因は意外なことにロボだ。
【意外!? 敵でも味方でも弱かったウェアウルフは実はAGI特化の強力な物理アタッカーだった!?】
ゲーム内から見れる掲示板でそんな見出しをよく見るようになった。ほんっとこいつらどこからこういう情報嗅ぎつけているんだよ。
「ネトゲ民に手の関節は付いてないよなぁ」
思わず口に出る、まぁ思うことは沢山あるけど環境の移り変わりを表すネトゲ特有の現象と割り切ってからは特に思うことはない。
「はぁ……」
ただテイマー始めた連中が牧場に入って来てロボを執拗に追い回しているのは可哀想だし見てていい気分じゃないしどうしたものか。
インベントリに戻しても俺を追いかけてきそうだし、出してる時は所かまわず話しかけてきそうだし……うーん
「ニア様、ルーと名乗る転移者が訪ねてきましたが」
「通してくれ」
コボルトの族長、俺は姉御と呼ぶことにした彼女がルーさんが来たことを教えてくれる。
彼女にこの状況をなんとかできないものかと思って協力を要請したら快く引き受けてくれた。ほんとに頭が上がらなくなってきた。
「お邪魔しまーす」
そう言いながら入ってくるルーさん、近くに控えている姉御と大将はやや緊張しているようだ。
「それで今日は呼び出すほどの要件って何かな?」
座ってからそう聞いてくるルーさん、彼女を呼んだを一つ。
「スキルの作り方を……教えてください」
姿勢を正して土下座の格好でお願いする、自分でもロボの存在をうまく隠すためのスキルを作ろうとしたがうまくいかなかった、だからもうこの人に頼るしか道が無いと思ってのことだ。
だが帰って来た言葉が……
「まずはパクる」
「見も蓋もなくぶっちゃっけたよ!?」
誰も考え付くだろうけど遠慮して誰もやらなかったと思われる行動をぶっちゃけるルーさん、この人はほんともう……
「ごめんごめん、ニア君もやったと思うんだけど一からあーでもないこうでもないと悩みながら作るパターンね、実は大体の人がこれで納得のいくスキルを作れてないの」
ほぅ……意外だ。
「私たちいわゆる『成功者』って言われてる自作したスキルやジョブが多くの人に使われてるパターンはね、過去のトラウマとか成し遂げたい願いををそのままスキルに乗せてるの、だから」
トラウマや願い……か少し難しい話になりそうだ。
「だからとりあえず、パクるって所から覚えましょう」
両手を合わせながら笑顔を浮かべると彼女は立ち上がる、そして
「ロボ君とニア君だけ付いてきて」
と言うと歩き出して行った。
※※※
彼女が立ち止まったのは牧場の敷地内の湖の前だ。そこで俺とロボも止まる。
「ロボ君、ブラッディー・イェーガーを使ってもらえる?」
今の彼女は片手剣を持っている以上テイマーではないはずだ。それを察したロボは頷くと攻撃姿勢を取る。
――――刹那の攻防だった、ロボの姿が消えた瞬間にはルーさんの背後に現れその体を丸のみにせんとばかりに大きな口を開いていたが……
「ゴフッ!?」
「ありがと」
「嘘だろおい……」
ルーさんはそれを鞘に入れたままの剣で受け流してしまった、この人の実力は未だにそこが知れない。ロボも大したダメージは負っていない用だった。
「これを『鮮血狩人』って名前で作るね」
と言いながらメニュー画面を操作しているルーさん、一分くらい経ったころ
「OK、それじゃあ今度は私がやるからロボ君はカカシ役お願い」
「は……い?」
イマイチマネされるという実感を持ててないロボ、それでもジョブ的に言葉が伝わらない彼女と意思疎通するために頷く。
「はぁっ!」
短い掛け声とともに姿を消すルーさん、そして次の瞬間には
「……こんな感じかな?」
「ッ!?」
彼女の剣はロボのうなじを捉えていた、鞘に刀を納めていたから無傷だったものの抜身の刃だったら今頃ロボは……と思うと背筋が凍る。
「使い勝手を重視したいならこのまま完成かな、威力を上げたければ簡単な詠唱なり前口上を付ければいいの」
というと彼女は再びメニュー画面を弄り何かをする。すると……
『血の彼岸花を咲かせて絶命しろ 鮮血狩人!!」
「グエッ!?」
恐らく同じ動き、しかしそのスピードは既に認識できない程になっており、威力は鞘に納めたままでもロボが変な悲鳴を上げる程のモノになっていた。
「すっげぇ……」
これしか言葉が出てこない、誰か俺に語彙力をください。
「ロボ君ごめんね? 大丈夫?」
「身をもって貴女の強さをしりやした……」
申し訳なさそうにロボの頭を撫でるルーさんと、彼女がジョブチェンジをしてテイマーになった証である本を装備したことを確認してから喋り出すロボ。心なしか俺に出会ったばかりの頃の態度に重なる。
「これがパクるってことね、元がある分スキルは作りやすいけど、『パクりだ』とか『マネすんな』とかで叩かれやすいの」
「なるほど……」
と口では言ったものの、こんなにあっさり作れてしまうならルーさんは呼んでない。
「じゃあもう一個、自分に聞いてみようか」
そういうとルーさんは何故か地面に正座をして自身の太ももをポンポンと叩く
「ここに寝転がって」
「えっあの」
「寝転がって?」
「はい……」
寝転がるのはいいんだ、何故膝枕なんだ……ルーさん自身は顔を赤らめてる訳でもない、善意100%の行動だろう、変なこと考えている俺が馬鹿らしくなってきた……
言われた通り膝を狩りて寝転がる
「目を閉じて」
言われた通りに目を閉じる
「ここから少し、催眠術っぽいことするけど洗脳とかじゃないから安心してね」
「はい」
言われた通り目を閉じるがなにを始めるんだろう……と思っていると顔を優しく手で覆われる。
「言われたことを想像してみて……ここは真っ暗で上も下も分からない空間です、そこに貴方は自身のファミリア、ロボ君と二人きり」
真っ暗な空間に自分とロボを思い浮かべる、ただどういうわけかロボ君は少し疲れている様な雰囲気を感じる
「ロボ君の様子は?」
「正直、疲れているように見える」
場面に見えるロボの様子をそのまま報告する。
「マスター……俺っちそんなに疲れて見えます?」
「ロボ君はちょっと黙ってて」
「はい……」
俺の言葉を否定しようとしたロボがぴしゃりと怒られて黙ってしまう。
「貴方はロボ君を助けたい、けれどどうしていいか分からない。ただ、もし貴方に物を何でも好きなものに変える力があったら彼をどうする?」
「人形みたいに可愛らしい姿にして強そうに見えなくしたい……それこそ『マスコット』の様に」
「はい終わり、起きてロボ君を見てみて」
そして急に始まった膝枕は急に終わる、言われた通りロボを見ると……
「マスター……急に世界が大きくなったんですが」
「ロボォォォォォォォォォォ!?」
ロボがシベリアンハスキーの子犬みたいになっていた。可愛いけどこれは予想外だ。
「スキルに新しいスキルが一個追加されてるはずよ」
言われた通りスキルを確認すると
【オリジナルスキル:自分で作ったスキルです。
マスコット:ファミリアを小動物化します(アクティブスキル)
】
と追加されていた、そうかこれが……
「俺の初めての作成スキル……」
「おめでとう、後は広めるも広めずに唯一無二のスキルにするもニア君次第だよ」
「あざっす!」
これを自分一人でできれば一人前、かな
「この調子でもう一つ作ってみない?」
「うっす!」
それから俺はルーさんに協力してもらいながらスキルの作成に集中した
※※※
あれから数時間、俺は二つ(俺にとって)重要なスキルを作ってから大きな家に戻って来た。
【オリジナルスキル:自分で作ったスキルです。
マスコット:ファミリアを小動物化します(アクティブスキル)
ヒューマロイド:ファミリアを擬人化します、ステータスに変化はありません(アクティブスキル)
対話(他):マスター以外、テイマー以外のNPC、プレイヤーとの会話を可能にします。
】
ヒューマロイドはまだ誰にもかけてないが、これで俺がINしてない時間帯の取引を任せたい奴にかければいいし、ルーさんやこれから知り合うプレイヤーにも一々テイマーにジョブチェンジしてもらう必要もない……はず。
「これは便利ね……」
「この発想はなかったですよマスター」
「だろ?」
今までテイマーが必要とされてなかったからこういう方向でスキルを作っていけば特に叩かれることもないはずだ。
「この調子でもう二つ作りたいけど……」
さすがに疲れたしこれは既に作られているかもしれないから見なかったら作ろうという考えだ。
「ねぇねぇニア君、今度一緒にID探索どう?」
ID、インスタンスダンジョンという略でパーティーなどの少人数グループ毎に、一時的に生成されるダンジョンのことだ。
「ちょうどニア君のレベル帯近くで気になるとこがあって」
「俺はいいっすよ」
少しレベル差が気になったが、行き先が俺のレベルでもまぁどうにかなるレベル帯だから何とかしてくれるだろう……ティアが。
「ありがと、よろしくね」
この時はにこやかに笑顔を浮かべていたルーさん、しかしこの後大変なことが起こるとは誰も気づかず……すいません言ってみたかっただけですフラグでも何でもないです。




