必殺技っぽいモノの名前言っていこうぜ1
超短編「必殺技っぽいモノの名前言っていこうぜ」の前日譚的なものです。
「ねぇ、また津戸山くんがモンちゃん見てるよ。
もしかして、恋されちゃってるんじゃない?」
「んー。いや、多分だけど、視線の種類が違うっていうか。
どっちかっていうと、観察されてる気がするんだよね」
「えっ、そうなの?
よく分かんないけど、何か変なことされそうだったら言ってね」
「うん、ありがと。その時は相談する」
~~~~~
「あー、門壁さん、さ。
急に変なこと聞くんだけど」
「なぁに?」
「俺ら、どっかで会ったことある?
あっいや、ナンパとかそういうアレじゃなくて。
門壁さん見てると、妙にこう、既視感がすごくて。
ずっと考えてたんだけど、どうしても理由が分からないもんで、喉元モヤモヤしっぱなしっていうか」
『おや、てっきり警戒の視線だとばかり思っていれば。
よもや、私の正体に気付いておらなんだとは』
『はっ!? な、なんでその言葉!
お前、誰だッ!』
『まだ分からぬか?
くくっ、まったく薄情な男だ。
死出の旅路を共に歩んだ仲であろう? んん?』
『まさか……っ大魔王!?』
『うむ。久しいな、勇者。
このような場所で再会するとは驚いたぞ』
『お前っ! そんな姿に擬態して、いったい何を企んでいる!』
「えっとぉ、期待してもらって悪いけど、私、ただの無力な女子高生だし。
津戸山くんだって、状況は同じなんじゃないの?」
「っそれは……! いや、でもっ!」
「とにかく、そういうことだから。今後、変に絡んでくるのは止めてくれる?
喚くのは勝手だけど、そっちが白い目で見られるだけならまだしも、私まで巻き込まれちゃ堪らないもんね」
「はぁ!?」
「じゃ、私からはそれだけだから。ばいばい、津戸山くん」
「なっ! おい、待て! だぃっ……門壁ぇ!」
~~~~~
(いくら転生で無力化されてるとはいえ、腐っても元大魔王だ。
人知れず、どんな非道を行ってたって不思議じゃあねぇ。
俺がしっかり見張ってないと……)
「ねぇ、また津戸山くんがモンちゃん睨んでるよ。
大丈夫? 先生に言って注意とかしてもらう?」
「んんー。変に刺激するのも怖いから、放っておきたいかな。
今のところ、何かされたってこともないし」
「もうっ、されてからじゃ遅いでしょ!
イヤっていうなら出しゃばらないけど……本当に気を付けてね」
「うん。いつも、ありがと。ミンちゃん、大好きっ」
「モンちゃああん、私も好きぃーーーっ」
(しかし、演技上手ぇなアイツ)
~~~~~
(何が美化委員だ、大魔王が花に水なんかやりやがって。
似合わな……いや、見た目だけなら様になってんな。逆に腹立つ)
(日直日誌に変なことは書かれてないか。
チッ。大魔王のくせに無駄に綺麗な字ぃ書きやがるぜ)
(んあ? 何だアイツ。黒板の上までは手が届かないのか?
当番の相方も同じぐらいの背丈だな。
出席番号順じゃなくて、もっと考えて組ませりゃいいのによ。
まぁ、文字が消えてなくて困るのは次の教師とクラスメイトだし、俺がやってやるか)
(ああして友人同土でくっちゃべってると、普通の女にしか見えねえな。
よくもまぁ、あそこまで徹底した擬態ができるモンだ)
(えぇ……?
校内球技大会で優勝したからって、あの大魔王がチームメイトと喜び泣きしながら抱き合ってる?
演技であんなことまで可能なのか?)
(ったく、甘い物なんかでお手軽にヘラヘラしてやがって。
大魔王だった頃の威厳も何もあったもんじゃねぇ)
(なん……だと……?
アイツ、自転車に轢かれそうだった友人の緑谷を庇って自分がケガしやがったぞ!
どういうことだよ、大魔王っ!
……しかし、この状況で見てるだけってのも人としてどうかって感じだな。
相手が相手だが、仕方ねぇ)
(ん? アイツ、今、妊婦に席を譲ったのか?
あとで金でも請求するんじゃあるまいな。
……あ、普通に降りてった)
(へえ。大魔王のやつバラードなんか聴くのか。
似合わねーの。ソレらしくデスメタルでも好いとけよ)
(は? アイツ大魔王のくせに、一丁前に告白なんぞされてやがる。
目を覚ませ、そこの男!
今は上手く隠してるようだが、そいつは敵どころか仲間にすら恐れられてた冷酷で残虐な大魔王だぞ!
……アレ? なんだ、普通にフっちまうのか?
手玉にとって利用もせず? え?)
(あぁん!? 大魔王と緑谷が不良集団に絡まれてる!?
おいおい、アイツら何やらかしやがったんだよ!
くそっ、シャクだが俺が出ていくしかねぇか!)
(文化祭準備で遅くまで学校残って真面目に作業してる大魔王って何?
コイツ、人間生活満喫しすぎじゃねぇの?
……あっ、バカ。女がペンキ缶なんか運ぼうとすんじゃねぇっての。
なんでこう、ちょいちょい無茶すんだ。
そんで、また手近な男手が俺しかないと来た。チクショウ)
(……ヤベェな。
なんか、見れば見るほど普通の女子高生にしか思えなくなっちまってる。
ホント何なんだよ、アイツ)
(………………もう、認めるしか、ない、か)
~~~~~
「私に用事ってなに?」
「あー……その、門壁。
元アレだからって、今まで疑ってかかって悪かった」
「っえ」
「お前はもう、えと、昔とは違う存在なんだよな」
「え、ど、どうした? 腹でも下しておるのか?
保健室連れて行くか?」
「ぶはっ! 口調戻ってんぞ、門壁」
「いや、だって、そんな急に……っ!」
「急じゃないさ……ずっと見てた」
「ふぁッ!?」
「それで、アレなんだが、ええと、お前を見てる内に、だな。
どうも、俺、惚れちまったらしくて、さ」
「ひぇっ!?」
「今更、どの口がって感じだが……その、考えてみてくれないか。
男女交際というのを、門壁、お前と出来たらいいなと思う」
「だっ、な、なんっ、おああ?」
「あ、えっと、ごめん。やっぱ、気持ち悪いよな。
俺みたいなのから、こんな……」
「やっ、ま、ちがっ、違う!
ゆぅっ、つ、津戸山は、いつも優しかったもん!」
「へ?」
「私が昔、酷いこと、許されないこと、いっぱいしたって知ってて、なのに、困ってたら当たり前みたいに助けてくれて。
だ、だから、ダメだって思ったけど、どうしても、私……私も、津戸山のこと……」
「は……え、マジ? え?」
「ま、マジ、ですぅ」
「っええええぇええぇぇぇぇぇえええ!?」
「ちょっ! たわけ者! 声を抑えぬかぁ!?」
~~~~~
「えぇーっと、じゃあ、いいのか?
その、恋人同士、ってことで」
「……………………ん」
「お、おう。そうか。うん」
必殺技っぽいモノの名前言っていこうぜ
前日譚的なもの おわり




