7話
その日の夜……俺は自分のベッドの上で天井を見つめながら考え事をしていた。
「今更、変わるなんて無理なんだ。あれは本心、なのに何でいつまでもモヤモヤが消えないんだ……?」
その原因を掴むため、俺は昔を振り返る…………小さい頃の俺は割と頑張っていた。だけど中学校、高校と成長するにつれて、努力しても所詮、自分は中の下にしかなれない事を知った。
「だから俺は自分に対して諦めて、どんどん保守的な考え方になっていった……」
そのせいなのか、社会人になってからは酷かった。最初に配属されたところでは体力が無いと馬鹿にされ、異動した先にはコミュニケーション能力が無さ過ぎると陰口を言われ……。
「はぁ…………あの頃にはもう、戻りたくない」
そう思った瞬間、モヤモヤの正体が分かった気がする。もしかして俺……心の奥底で、このままだとあの頃に戻ってしまうが、それで良いのかって警鐘を鳴らしてくれていたのか?
「…………うん、そうかもしれない! 考えてみたら何をやっても中の下は変わらなかったとしても、いまは過去……行動次第で嫌な未来を回避することぐらいは出来るかもしれないんだ!」
そう思ったら、心がスッキリして沸々とやる気が湧いてくる。
「……よし! まずは鈴原さんとの練習を頑張る事から始めてみようか」
──次の日の放課後。早速、体育館に向かう。鈴原さんは先に来ていて、ストレッチをしていた。俺は小走りで鈴原さんに近づく。
「……なに?」
「昨日はありがとう。鈴原さんが俺の事をちゃんと見てくれていたから、気持ちを整理するキッカケが出来た」
俺がそう言うと、鈴原さんは何故か一瞬、驚いた表情を見せる。だけど、それを隠すかのように下を向いて、念入りにストレッチを続けた。
「…………あ、そう。それより練習するなら、ちゃんとストレッチをしなさいよ」
「うん、ありがとう。鈴原さんは優しいね」
「……はぁ? 何でそうなる訳? 私はただ怪我されると困るから言ってるの! 勘違いしないで!」
「うん、そうだね」
※※※
──それから二週間が過ぎ、クラスマッチの日となる。その間、鈴原さんと心の距離が縮むことはなく、練習は淡々していた。だけど練習することで体の動かし方が分かってきて、バドミントンは楽しいものに変わっていた。案外、スポーツはそういうものなのかもしれない。
「──トーナメント形式。タイブレークは無し、ラリーポイント制で10点取った方が勝ちです。それでは始めて下さい」
審判をしてくれている男子が説明してくれて、俺達の試合が始まる。相手は見たことが無い男女のペアだ。頑張って来たから、一回戦で負けたくない。俺はそう思いながら、ギュッとラケットを握って構えた。
まずは女子の方がシャトルを持ち、サーブを打ってくる。シャトルは……ネットに届くことなく、地面に落ちた。
「あ~、失敗しちゃった」
「ドンマイ、ドンマイ」
今のサーブで女子は素人だと何となく分かる。同じ素人だったら、勝てるかもしれない! そう期待しながら、ラリーを続けていくと……人生そんなに甘くない事を思い知らされる。
男子の方が、女子をカバーできるほど、運動神経が良かったのだ。
「──フォルト。試合終了です」
「ありがとうございました!」
俺達は挨拶を交わすとコートから出る。結果は10対6で俺達は負けてしまった。まあ……ラリーは結構、続いていたし、相手の事を考えると練習しなければ6点も取れなかったかもしれない。そう考えたら、良かった方じゃないかな?
「……あ」
きっと鈴原さんも同じ気持ちだろうと思って、チラッ顔を覗いてみたが、鈴原さんの顔は満足どころか、不満に満ち溢れるている程、眉間にシワを寄せていた。
「こりゃ、きっと……」と、様子を見ていると、予想通り景色が途切れる──俺達は試合が、始まる前まで戻されていた。
ちょっと卑怯だけど、起こってしまっているものは仕方ない。俺達は全く同じ相手と二回戦目を始めた──。
「鈴原さん、後ろはカバーできるよ!」
さっきはラリーを続けるのが精いっぱいだったけど、二回目ともなると、ほんの少し余裕が出て来て、声掛けを出来る様になっていた。その甲斐があって──。
「フォルト、10対8で1組の勝利です」
俺達はギリギリ勝利する! 勝ったんだから、満足だろう! そう思って鈴原さんの顔を見てみたけど……表情から喜びは感じ取れなかった。でもタイムループは……起こらない。きっと鈴原さんの中では、これは当たり前の結果と思っているのかもしれない。
「鈴原さん、今度も出来るだけ声を掛けるようにするね」
「…………うん」




