5話
──数日が過ぎ、6月に入る。俺達は体育の授業を受けるため、ジャージに着替えて先生の周りに集まっていた。
「全員、集まったか? ……今月中旬に、クラスマッチが行われるが、種目はバドミントンだ。ダブルスでやるから今からペアを探して、練習するように。ミックスダブルスでも構わないぞ。以上」
体育の先生はそれだけ伝えて、体育館の端の方へと歩いていく。
「バドミントンか……」
そういえば小林と組んだけど、お互い高校の体育の授業しかやった事なくて、初戦敗退だったな……かといって、小林以外に誘える人なんて居ないから、声を掛けてみよう。
「──小林。俺と組もうぜ」
「あぁ、もちろんだよ」
簡単にペアは成立する。時間を無駄にしない様に早速、練習をしようと小林と歩き出したとき、何故か、景色が途切れる……おぉ、神よ。人見知りの俺に試練をお与えになるのですか?
「まぁ……誰と関わらなきゃいけないかは分かるんだけど」
タイムループが起きたという事は、鈴原さん繋がりに違いない。
「でも、あそこに参戦しろと?」
鈴原さんの周りには、ハイエナの様に数人の男子生徒が声を掛けられずに、様子を見ながら集まっている。その反面、女子は鈴原さんを相手にせず他の女子と、どんどんペアを組んでいる状態だった。鈴原さんはそれを感じ取っている様で、腕を組みながら、顔を歪めている。
「困ったな……」と、呟いていると二回目のタイムループが発生して、小林に話しかける前まで戻されてしまう。
困っている場合じゃないか。俺は意を決して、ハイエナたちの方へと足を向ける……すると、先生も様子を見ていた様で歩き出していた。
「おーい。お前ら、そんな所に集まって何をしてるんだ? さっさと決めろ!」と、先生が言っても、男子生徒達は誰も返事をしないで、動こうともしない。
「お前らの目当ては分かってるぞ。取り合いになるぐらいなら、ジャンケンでもして決めろ!」
先生がそう言うと、男子生徒達がゆっくりと動き出す。チャンス! そう思った俺は小走りで近づいた。
「じゃあ、ジャンケンしようぜ。隣の奴と二人でジャンケンして、勝ったらここに残れよ」
一人の男子生徒が仕切ってくれて、周りがジャンケンを始める。俺も隣の人とジャンケンをした。結果は……。
「負けた」
負けたからと立ち去ろうとすると……ジャンケンをするところまで戻されてしまう。やっぱりね、そう簡単に許してくれないか──こうして俺は勝つまでジャンケンを繰り返す。チートだけど、タイムループしてしまうので、仕方ない。
「よし、勝った!」
長きに渡る戦いを制して、俺は鈴原さんとペアになる権利を手に入れる! だけど、本人がどう出るかは分からんけど……正直、そっちの方がドキドキだ。
「貴幸」と、小林が後ろから話しかけてきて、俺は小林の方に体を向ける。
「お前が鈴原を狙っているなんて思わなかったよ」
「いや、違う……違わないか。えっと……ごめん! 本当はお前と組みたかったんだけど、その……」
「気にしなくても大丈夫だよ。俺はもう組む奴を決めた」
「そう……それなら良かった!」
「お前も良かったな。じゃ!」
小林がコートに向かって歩いていくのを見送っていると、女子生徒が二人、俺の前を横切る。
「鈴原さんのペア決まったみたいね」
「ペアになれって言われなくて良かったぁ。鈴原さんとコミュニケーション取れる気がしないもん」
「キャハハハハ。ほんと、ほんと」
うわぁ……ドン引き。鈴原さん近くにいるし、あれ絶対わかって言ってるよな。胸が痛んだ俺は、何をすれば良いのか分からず、黙って鈴原さんを見つめていた。すると鈴原さんが、仏頂面で動き出す。
「一人で練習するつもりかな?」
……サーブの練習ぐらいなら、一人でも出来る。鈴原さんがペアを認めてないなら、俺も一人で練習するとするか。そう思って歩き出すと、鈴原さんはラケットを2本持って、こちらに歩いてくる。
「…………はい」と、鈴原さんは1本ラケットを俺に突き出す。負けん気の強さを感じ取った俺は安心して頬を緩ませ、ラケットを受け取った。
それが不快だった様で鈴原さんは眉間にシワを寄せる。
「なに?」
「何でもないよ。ありがとう」
鈴原さんは返事もせずにプイっと俺に背を向け、足早に歩き出す。俺は後ろを追い掛けながら、鈴原さんが望むなら協力するよと思っていた。




