3話
休み時間に入りに、鈴原さんは席を立ち……教室から出て行く。俺は慌てずゆっくり後を追った。
──このままじゃストーカーみたいじゃないか。そう思った俺は思い切って、鈴原さんに向かって「あのさ……」と声を掛けてみる。
だけど、鈴原さんは返事する所か、歩みすら止めなかった。もしかしたら自分じゃないと思ったのかもしれない。
「……鈴原さん、あのさ」
次は少し大きめな声で名前を出して呼んでみる──だけど、返事は無かった。それどころか、歩くのが速くなってないか? そう思ったところで景色が途切れる。
「……やっちまったか」
何でこうなったのかは分からないが、俺は教室を出た所まで戻されていた。じゃあ、どうしたらいい? と、考えながら、ゆっくりと歩き出す──どうせループしてリセットされるなら、少し大胆な事をしてみるか?
俺は小走りで鈴原さんの後を追い、深呼吸すると鈴原さんの肩に手を置き「鈴原さん、あのさ」と声を掛ける。
鈴原さんはビクッと肩を震わせると流石に足を止める。そして俺の手を振り払った。
「ちょっと、気安く触らないで!!」
そう言った鈴原さんは今にも俺のホッペを殴りそうな表情で睨みつけていた。その勢いに圧倒され、俺は「ごめん!」と直ぐに謝る。
鈴原さんは……何も言わずに、俺に背中を向けるとスタスタと歩いて行った。俺が黙って見送っていると、景色が途切れて……また、教室を出た所まで戻されてしまった。俺は大人しく教室に戻り、自分の席に戻る。
「──もしかして……」
椅子に座りながら、いま起こった事を冷静に考えていると、少し分かった気がする。鈴原さんにとって不愉快? な言動があると、タイムループになる条件が成り立って《フラグが立って》、タイムループが発生する仕組みなのかもしれない。
声を掛けてもダメだったことを考えると「……一筋縄ではいかぬってことか」
だったら尚更、色々と試してみたい所だけど……リセットされるとはいえ、俺の記憶にはさっきの出来事がちゃんと残っている。人を怒らせるのは気分良いものではないし、出来るだけ慎重に動くとするか。
※※※
──それから数日が経過する。その間、朝、会ったら欠かさず挨拶をしてきたけど、それでも、『邪魔』とだけ言われて過ごしていた。
そんなある日の朝、「……邪魔、退いてくれる?」と鈴原さんに言われる。
退いてくれる??? 新たな言葉が追加され、正直、俺は驚く。そんな俺の顔をみて、鈴原さんは眉間にシワを寄せた。
「なに?」
「いや、何でもない……鈴原さん、おはよう。もちろん退くよ」
俺が返事をすると、鈴原さんは無言で歩いていく。いつもと変わらない風景を俺はただ見送っていた。
「これって……進展していない様で進展してるのか???」
そう思うと少し嬉しくなってきて、俺はその場で小さくガッツポーズをしていた──自分の教室に入り、席に着くと、俺は隣の席で読書している鈴原さんに目を向ける。数日の間、俺は何もして来なかった訳じゃない。こうして鈴原さんの様子を見てきた。
……今朝、少し進展があったんだ。今日は会話をするところまでいけるかもしれない。そう思った俺は思い切って「今日はミステリー小説を読んでるの? 昨日はファンタジーだったよね?」と、話し掛けてみた。
すると相変わらず鈴原さんは眉間にシワを寄せる。今朝もそうだったけど最近、その顔も可愛いなと思うようになってきた。俺は変態なのかもしれない。
「気安く話しかけないでくれる? それに何? 私を監視してるの?」
「監視だなんてとんでもない。興味があるだけだよ」
「……あ、そう」
鈴原さんはそう答えて、プイっと顔を背ける。態度が冷たいようだけど、本当に冷たい人は相手にもしてくれない。俺はそれを社会人になって経験している。だから鈴原さんは優しい方だ。
「さて……」
微妙の会話だったけど、タイムループは起こるだろうか? ──よし、起こらない。ここ数日でやってきたことは他にもある。鈴原さんに何を聞いたらタイムループが起きてしまうのか試していたのだ。
「……まだこっちを見てるの? 気になるから、もうやめて」
「あ、ごめん。分かったよ」
試していて1つ気付いたことがある。それはフラグが立った後に数秒の余裕があるということだ。 何故、そんなものがあるのか? もしかしたら、その数秒間に行動を起こせば、タイムループは無くなるのでは? その疑問はあるものの、証明する方法が分からなくて、まだ解決は出来ていない。まぁ……そもそもリセットされるんだから、そんなこと考えなくても良いのかもしれないが……どうも引っ掛かっていた。




