どうしても海を歩けない
龍二はあきらが実際歩いているとを見ていない!しかしあきらのことを信じている。
龍二は明日まで待てない。我慢できなかった。今夜は眠れそうにない。
母親が寝静まった頃、そっと裏口から出て行った。龍二は小走りに秘密の場所へ向かって走っていった。月夜の晩でけっこう明るく、懐中電灯もいらないくらいだ。
途中がじゅまるの木の横を通り過ぎようとした時、急に風が強くなり、がじゅまるの木が大きく揺れだした。龍二は立ち止まった。
その時後ろに何かいるような気配を感じた。
(またや、なんか変な感じ)
龍二はつぶやくと、気味わるいのですぐに走り去ろうとした。
いつだったか母親に聞いたことがある。がじゅまるの木にはきじむなーという妖怪がいるから気をつけなさいと。特に子供に悪さするからと・・・。
(まさか、きじむなーだったらどうしよう)
龍二はつぶやくとまた立ち止まった。恐る恐る振り向くと風もおさまり、何事もなかったように何の気配すら感じられなくなっていた。
秘密の場所についた。昼間と違って夜の海は静かだ。月の灯りが白い砂浜と浅瀬を大きく照らしている。
龍二は大きく深呼吸した。そして両こぶしを突き上げ
「よっしゃー」
両こぶしを上げ大きくポーズをとった。そして、にやっと笑うと海辺へと歩いていった。
「僕、今から海の上を歩くんや」
龍二は胸にこみ上げてくるものがあった。そしてあきらにいわれた通り、とりあえず右足を入れてみた。そして右足が沈む前に左足を入れる。しかしなかなかうまくいかない。何度やっても沈んでしまう。
(おかしいなー、あきらくんに言われたとおりやってみたんやけどなー。僕には無理なんやろうか?やっぱりあきらくんってすごいねんなー)
龍二は不安になりながらも、まだあきらを信じていた。
「あっ、わかったわ」
龍二は大声をあげた。
(なーんや、そうやったんや)
龍二は思い出したのだ。
「なーんや忘れとったわ、僕ってアホやなー、そんなことすぐわかるはずやって」
すると龍二は思わぬ行動に出た。
「右足からやなく左足からはいるんやったんや、ハハハハー。ちゃんとあきらくんのように、最初からそうやってたらよかったんや、ハハハハー」
龍二は大声で笑った。またも大きく深呼吸した。そして両こぶしを突き上げ
「よっしゃー」
と、またもガッツポーズをした。そしてまたもにやっと笑った。
しかし無理だった。どうしても沈んでしまう。海の上を歩けない。なぜだかわからない、悔しかった。でもどうしようもない。そして、とうとう大声で泣きだしてしまった。
するとその時、砂に足をとられおぼれそうになった。
そのときだ
「えーっ、いゃー、ぬーあびやーあびやーしちょーがーひゃー。いゃーすぐたっくるさんどーやー(おいおまえ、なにさわいでるんだ。おまえなぐるぞー)」
遠くから怒鳴る声が聞こえた。その声で龍二は我にかえった。海は遠浅でひざまでしかない。溺れるはずがなかったのだ。
... 「えーっ、トゥルバイ(ばか)。いうーくゎーさらんどーひゃー(つれる魚もつれないさー)。やなわらばー(このガキ)ぺーく(早く)
けーれー(帰れー)トゥルバイが」
釣り人だった。
その一部始終見てた釣り人たちは、
「えー、あぬくゎー、タエちゃんとぅくぬ龍二やーらんなー?(おい、あの子、タエちゃんとこの龍二じゃないねー)」
「やいしが、ぬーそーたがやー、ちゅめーわーらんやー(そうだけど・・・、でも、なにしてたのかね。なんだかさっぱりわからんさー・・・)」
龍二は釣り人に怒られ泣く泣く帰っていった。




