海を歩く?
あきらと一緒なら鬼も怖くない。さぁ、古宇利島へ鬼退治やー!
1キロぐらい歩いただろうか、坂道を降りると海が見えた。南の島らしく、青い空青い海、そしてすぐそこには小さな白い砂浜があり、海の向こうには小さな島が見えた。
「ここだよっ」
あきらは、人差し指を鼻の下にこすり付け得意気にいった。
「すげーっ、ここが秘密の場所なんやー!どうやって見つけたん?なぁなぁあきらくん」
「えっ? そ、そんなの言えないさ!だから秘密の場所っていうんだよ」
あきらはしどろもどろになりながら本当のことが言えなかった。そもそも父親と一緒に釣りに来たのがきっかけなのだから。
砂浜を見渡すと、結構人の足跡が残ってる。しかし、龍二には見えていない。そんなこと龍二には全く興味がなかった。ただ、この秘密の場所に来たこと自体が感動だったのだ。
「龍ちゃん、龍ちゃんだけに教えてあげようね」
あきらは龍二がなんでも信じてくれることが嬉しかった。
「なぁなぁあきらくん、なに教えてくれるん?」
あきらはにやっと笑うと、待ってましたとばかりに
「龍ちゃん、あわてんでもおしえてあげるさー。あの島見えるさねー!こないださー、あの島にいったんだよ」
「あの島?・・・、あの島って?あの島ってアイスランド(古宇利島)ってお母ちゃんいうてたよ。氷の島やって。それに、無人島やいうてたワ」
龍二は古宇利島のことを氷の島と間違って教えられているようだ。
「それが違うんだよなー龍ちゃん。あの島にはさ、鬼がいっぱい住んでるんだよ」
「えっ、鬼?・・・、なんでそこに鬼がおるん!あそこって氷の島やん、そんな寒いとこに鬼って寒くないんかな?・・・、それでひとりでいったん?怖くなかったん?」
龍二は立て続けに聞いた。
「もう、ワジワジ(腹立つ)するさーねー。どぅちゅい(ひとり)に決まってるさー。それに俺には怖い者なんてあるわけないだろう」
「へー、そうなんや。ほんでどうやっていったんよ、泳いでいったん?」
するとあきらは
「いゃー、とぅるばいかー(おまえはばかか)。龍ちゃん、あのさ、あんなとこまで泳いでいけるわけないさーね!あの島まで何千キロもあるのわかってるねー。それに人食いザメに食われたらどうするばー」
あきらはすぐ怒り口調になる。
「えっ?えっ?人食いザメ?・・・、ほ、ほんならどうやって行ったんよー」
龍二は怖くなり、だんだんと声が小さくなっていった。
「歩いていったさー。俺さ、海の上歩けるんだよ」
あきらの口はもう止まらない。
「えっ、えーっ?」
龍二は口がポカーンとあいたままだ。
するとあきらは砂浜で身振り手振りしながら
「よーく見とくんだよ、龍ちゃん」
あきらは海辺の方向にゆっくりと歩いていくと大きな声でいった。
「左足をこう海に入れるさねー、そうっとだよそうっと」
龍二は生つばを飲みこむと、その様子を真剣にみている。
あきらは、さらに続けた
「今度は右足をこう入れるんだ。左足が沈む前にだよ、わかってるの龍ちゃん。こうやってさぁ、ずっとおんなじようにくりかえすんだよ」
龍二は頭がこんがらがってきた。でも目は輝いてる。
それでもあきらは
「右足が沈む前に、また左足をこう入れるさねー。また、左足が沈む前に、右足をこう入れるんだよ。こうして繰り返し繰り返しつづけたら沈まなくてすむさーね」
あきらは龍二を横目でちらっと見た。その顔は得意げで満足そうだ。
「へー、そうなんやー。あきらくんが発明したん?あきらくんて凄いんやね。でも僕にもできるんかなー」
龍二は不安になりながらも、心の中に夢と希望が膨らんだ。
「そんなのわからんさー。でもさ、できたとしてもさ、あの島には鬼がいるんだよ。龍ちゃんには無理だよ。鬼に食われちまったらどうするんだよ」
「そっかー!あの島には鬼がおるんや。ほんなら僕いかれへんやん。怖いし鬼に食われてもいややし。でも行きたいなー。どないしたら行けるんかな!なぁなぁ、あきらくん」
「だろうだろう。だったら僕がつれてってやるよっ!」
あきらはドヤ顔でいった。。
「でもあの島には鬼がおるんやろう?」
龍二はまだ不安そうだ。
「あれっ、おっ俺言ってなかったか?なんでー龍ちゃん!よーく聞くんだよ。本当はさ、僕さ、こないだひとりでいってきてさ、鬼ぜーんぶやっつけてきたんだよ」
あきらはニヤッと笑いながらいった。
「えーっ?、うっそー!そうやったんやー、だったら今からいこうや」
龍二の顔色が変わった。
あきらはもう後へ引けなくなる。しかし、あきらは負けてはいない。
「今日はもう遅いからさー、でもこのことはぶんじーたちには内緒だよ!人に喋ったら海の上歩けなくなるからさ。そうなったらでーじ(大変)さね。また今度にしよう」
あきらはうまいこと逃げたようだ。




