マジムンの世界 2 誠仁おじいマジムンの世界を支配‼
ウヮーマジムンは、まだあきらを睨んでいる。まだ諦めきれないようだ。するとその後ろにはとてつもなく大きな影が見えた。
「あれ、せいじんおじいちゃーうん?」
龍二はウヮーマジムンの後ろの方を指さしていた。そこには先日亡くなったとされた誠仁おじいがいた。
誠仁おじいというのは、酒飲んでは暴れる手のつけられない老人であった。老人のわりには体も大きく、ゆうに六尺(180センチ)はあったであろう。龍二たち子供から見ると、なんとマジムン(魔物)のようであった。
たしかに、八十歳にもなる誠仁おじいの噂は凄かった。台風の日、ひとりでサバニー(漁師の船)に乗って漁に出るとか・・・。台風で倒れそうながじゅまるの木をひとりで立て直したとか・・・。大人10人と闘って勝ったとか・・・。噂をいうときりがない。 しかし、その誠仁おじいがなぜ亡くなったのかが問題なのであった。
三ヶ月前誠仁おじいは、うぷんじゃー(仲宗根)の街で飲み屋の客5~6人ともめていた。杖を振り回し、大声でわめきちらし、もうどうにもならない誰にも止められない状況になっていた。店のママらしき女の人が必死に止めてはいるが、一瞬静かになるだけだ。そのうちもめていた客も逃げていなくなり、誠仁おじいひとりになっていた。
「えー、せいじんおじいよ、ちゃーすーがや(どうしてくれるの)むる(みんな)客かえしてからに」
店のママはきつい口調でいった。
「あいーっ、ママよ、じにーや ちゃさん むっちょんどーひゃー、きにさんけー(お金いっぱいもってるから気にしなくていいよ)」
「何いってるねー、お金の問題じゃないさー」
「あいあい、あきさみよーなー。むるわんがるわっさんてーや(しかたないね、みんなワシが悪いのか)」
「あたりまえさー。はっしゃびようなー(どうしようもないねー)」
「あんしぇー、ちゃーすーねーしむがやー(じゃー、どうしたらいいのかね)」
「えー、せいじんおじいよ、たしかうみんちゅー(漁師)だったよね」
「やんどう(そうだ)、ワシは天下のうみんちゅるやんどうひゃー(漁師なのだぞー)」
誠仁おじいは急に仁王立ちになった。
「おじいに頼みたいことがあるさー。あのさー、グルクンの刺身食べたいと思ったからさー、今からとってきてくれないねー」
ママは本気じゃなかった。ただ誠仁おじいに早く帰ってほしかったのだ。しかし誠仁おじいは本気に受け止めたのだ。
深夜12時を過ぎたころ、誠仁おじいはサバニに乗り古宇利島の沖にむかった。グルクンの住みかに着いたころ、突然風が強くふいた。そして、どす黒い霧が発生していて、前方がまったく見えなくなってしまっていた。するとその時、前方に小さな光が見えた。誠仁おじいはそれをグルクンの目に見えたのだろう。そこへサバニを近づけたとき光のなかに吸い込まれたのだ。そこがマジムンの世界だったのだ。
その頃今帰仁では、誠仁おじいは海で死んだと噂されていた。しかし、誠仁おじいにとってマジムンの世界は天国のようだった。そしてあらゆるマジムンらを短期間でやっつけると、とうとうその世界を支配していたのだ。それに人間の世界にいた頃よりも体が何倍も大きくなっている。そして何倍も共謀になっているようだった。




