マジムンの世界 1
「あきらくん、夜の空から見た古宇利島、きれいやろう?」
「・・・・・」
あきらは古宇利島にいったことがないので答えようがなかった。それに、古宇利島の夜景の美しさにも、あきらは興味がなかった。
(龍ちゃん、早くいくで)
カイトはうまくごまかした。
古宇利島を過ぎると、突然風が強く吹いた。そして、どす黒い霧が発生していて、前方がまったく見えなくなってしまっていた。
(たしか、このへんやった思うねんけどな!)
カイトは長老にいわれたとおり、この場所に来てみた。しかし、それ以上は聞かせてもらえなかった。ここからは、自分の力でいかなければならないということだった。
するとカイトは、霧のなかにはいっていった。
(カイトー、ちょっとまってや)
龍二は慌ててカイトについていった。あきらはもたつきながらもなんとか着いていったが、怖くて声がでない。
(ここかな?)
カイトは、下のほうをじっと見つめている。まっ暗闇で、まったく下が見えない。しばらくじっと見ていると、なんと米つぶぐらいの小さな光のようなものが見えた。
(ここやっ!)
カイトは叫ぶと、あきらの腕を掴み、光の方向に向かって飛んでいった。一瞬だった!すばやく、龍二もついていった。すると、そこはマジムンの世界の入り口だった。入り口は海底にあった。すなわち、ニライカナイの国への入り口でもあった。
(やったで、龍ちゃん。ナイスタイミングや!このタイミングのがしたら、当分入られへんとこやったわー)
(しかし、あんなちっちゃい光の中に、ぼくたちよう入れたなー)
龍二は感動していた。
「あれっ、あきらくん、ズボンぬれてる?」
「だからよ!海に入ったら濡れるにきまってるさー」
あきらは、苦しまぎれにいった。
「あっ!そうかー」
しかし龍二のズボンは濡れてなかった。あきらは、突然のカイトの行動で怖くなり、小便を漏らしてたのだ。
マジムンの世界は妙に薄暗かった。それに空気が乾いていて、まるで洞窟を広くしたようだ。それに、いまにもマジムンが出てきそうな雰囲気だ。
しばらくいくと、前方からある物体が猛然と三人の方向に向かって来るのが見えた。近くまで来ると、龍二とカイトは自然によけた。その物体は、ウヮーマジムン(豚の妖怪)だった。しかし、ウヮーマジムンの狙いはあきらだったのだ。あきらに向かって雄叫びあげながら猛然と突っ込んでくる。しかしあきらはよけようとしない。
(あれっ?・・・、龍ちゃん、あきらに石厳當渡してへんの?)
(えっ?なんでーな、ぼく渡したよー!ほんで、落としたらあかんでっていうたよ)
(おっかしいなー)
ふたりは首をかしげた。
「ぎゃー、たしきれー(助けて)」
ウヮーマジムンは、猛然とあきらをめがけて突っ込んでくる。あきらは逃げた。必死に逃げた。ウヮーマジムンはまっすぐしか走れない。
だが、あきらがジグザグに逃げてるせいか、なんとか逃げきっている。それが妙にこっけいに見えた。
「あきらくん、ウヮーマジムンなんかやっつけたらええやん!鬼にくらべたらかんたんにやっつけれるやろう!」
「だからよう、あれは鬼の話しさー!こいつ、マジムンだよー。マジムンに勝てるわけないさー!わかってるバー!」
「ん?そうなんやー!あきらくん、それやったら走って逃げんと飛んだらええやん」
「えっ?なにそれ!それを早くいえばいいさー。龍ちゃんぬーえるばーがー(なんやねんな)」
するとあきらは飛んだ。そしてやっとマジムンから逃れた。
「ふーっ助かったー。ウヮーマジムンさ、なんでおれだけ追いかけるわけ?もうデージするさー!」
ウヮーマジムンは、まだあきらを睨んでいる。まだ諦めきれないようだ。
「それはそうと、あきらくん。石厳當、もってるんやろう?」
龍二はマジムンの世界に入る前、たしかに石敢當をあきらに渡していた。
「で、石厳當ってなんねー?」
「げっ!こっち来る時、キーホルダーみたいなん、あきらくんにわたしたやんか!」
「あー、あれっ?あんなもんとっくに捨てたさー」
カイトは、龍二と目をあわすと、フーとため息をついた。
(こいつ、どこまでも迷惑なやっちゃなー、しんどうなってきたわ。ほんまこれから大変やでしかし)




