マジムンの世界 3 あきらは強い⁉
(龍ちゃん、ちょっとやばいでこれ。予想外や、まさかせいじんおじいがこんなとこにおるとは・・・。それに、さらにパワーアップしてるやん)
カイトは誠仁おじいを見ながら呆然となった。しかし、誠仁おじいはまだ龍二たちには気付いていないのがすくいだった。
(カイトー、なんちゅう顔してんねん。なんくるないさー(なんとかなるさ)やん。それにあきらくん、せいじんおじいの弱点知ってんねんで。)
(なんでまたあきらやねんな!またしょうもない嘘ついてるんちゃーうんかいな)
(だってな、せいじんおじいカミナリが怖いねんて。ほんでな、あきらくんカミナリつかまえたことあるやんか、だから大丈夫やおもうねん)
「なぁあきらくん、いざいうときはカミナリみせたったらいいねんな」
(なにそれ、意味わからんわ!もう先がおもいやられるわ、ほんまに)
カイトは半ば諦め顔だ。
たしかに誠仁おじいは、カミナリが苦手だった。しかし、音と稲光が怖かっただけでカミナリ自体はみたことはなかった。
するとそのときだ。龍二は、誠仁おじいの真上にきていた。
(なんでやねんな龍ちゃん、まだ早いっちゅうねん。これから対策考えなあかんねんから)
「おい、せいじんおじい」
「たるが・・・、わんゆぶしー?(誰、わし呼ぶのは?)」
「せいじんおじい、上や上。」
「ぬー、うゎーびー?たるがあびやーあびやーすーが、いゃーすぐたっくるさんどうひゃー」(何、上?誰がわしをよんでる、みんななぐってやるぞう)
そういうと誠仁おじいは上を見た。かすかな灯りに照らされ、フワフワと浮いてるなにかが見えた。薄暗くて龍二の顔ははっきりとは見えていないようだ。
「いったーぬん、マジムンるやんな。はじみてぃやんや(おまえらもまじむんか。初顔か?)
誠仁おじいは、凄むようにいった。
「なにいうてんねんせいじんおじい、僕たちがマジムンにみえるか?僕たちは正真正銘人間やで」
龍二のその一言がすすむおじいの怒りをかった。
「ぬーっ、人間がマジムンの世界になんのようじゃー。きさまら生きては帰さんぞ」
誠仁おじいは怒り狂った。
龍二は咄嗟にあきらの後ろに隠れた。今回はカイトよりもあきらのほうが頼りになると思ったからだ。カイトからすると厄介なはなしだ。しかしあきらはというと、ぶるぶるとふるえているだけだ。
「なぁ、あきらくん。武者震いか?そろそろカミナリだしたらいいねん。せいじんおじい、ビックリしてひっくりかえるで」
あきらは今にも泣き出しそうだ。
(意味わかれへんし、もうかんべんしてやー)
カイトも違う意味で泣き出しそうになった。
「貴様らー、さっきからなにいっとるんじゃー、なんならこっちからいかせてもらうぞう」
すると誠仁おじいは、となりにいたウヮーマジムンをつかまえて、龍二たちにおもいっきり放りなげた。するとウヮーマジムンは雄叫びをあげながら龍二たちにむかって飛んでいった。するとやはりウヮーマジムンのターゲットはあきらだ。
「あげっ、なんでまたおれなわけ?」
あきらそういうと右に左に逃げた。
さっきまでのウヮーマジムンよりもパワーアップしてるようだ。誠仁おじいにパワーをもらったのであろうか?
「ワー、ワーッ、たしきれー」
あきらは逃げ回る。するとカイトはしびれをきらしたように、龍二の持ってる石厳當をあきらの首にかけてあげた。するとウヮーマジムンは急におとなしくなった。
(しゃあないやんけ。そこまでせんとこいつ邪魔でしゃぁないやん)
カイトはひとり言いうと、ふーっとため息をついた。
あきらはやっと落ち着きをとりもどした。
「ふん、ウヮーマジムンって、たいしたことないさ。おれがちょっとにらんだらすぐに黙りよったさね。次はせいじんおじいでも黙らせようか。ねー龍ちゃん」
「さっすがあきらくん。その調子その調子。今度はせいじんおじいもその調子でたのむであきらくん」
しかしマジムンはそれだけではなかった。マジムンの世界を支配してる誠仁おじいとしては黙ってはいない。次なるマジムンが現れた。なんとピージャー(山羊)マジムンだった。ピージャーマジムンはウヮーマジムンほど凶暴そうではないが、ウヮーマジムン同様あきらを狙ってる。
すると誠仁おじいはピージャーマジムンをウヮーマジムン同様、龍二たちめがけ放りなげた。するとやはりあきらめがけとんでいった。しかし、ピージャーマジムンはウヮーマジムンとは違って石厳當は通用しない。すると、ピージャーマジムンの角があきらのおしりに突き刺さった。
「あがーっ(痛い)、なんでまたおれなわけ?」
なぜピージャーマジムンには石厳當がきかないのかカイトは知っていた。実は人間の世界にいたころ両マジムンは、あきらとかかわりがあったのだ。
沖縄では祝い時、豚と山羊を食べる習慣がある。そして、人間に食べてもらえることが彼らにとって生きがいだったのだ。その時あきらはいってはいけないことをいってしまった。山羊は臭いし美味しくない、人間の食べるものではないと。しかしたまたまあきらの口にあわなかっただけのはなしだ。しかし、山羊としては屈辱だった。その怨念が石厳當が通用しない要素なのだろう。
ピージャーマジムンの攻撃は容赦なかった。あきらのおしりを突き刺したまま暴れだしたのだ。
「あがーっ、あがーっ。どうなってるんだよー、龍ちゃんなんとかしてー、このピージャーマジムン、しに(すごく)しつこいよー」
あきらはひたすら逃げ回ってる。それがまたこっけいに見えた。
(カイトー、あきらくんなんとかなれへんの?)
(そうやなぁ・・・。でもそんなことより、あきらの奴ちょうどええやん。たまにはこらしめてやらんとあかんねん。まぁ、今回だけは龍ちゃんにまかすわ)
(カイトー、そんなこといわんとなんとかしてや。僕、どないしてええかわかれへんで。)
(ちえっ、結局そうなんのんか。わかったわ、ほななんとかしたろうか)
(やったー、やっぱりカイトやわ)
(・・・。でもいうとくで。僕、今回は直接なんもできひんで。龍ちゃんにやってもらわなあかんと思うねん)
(わかったわかった。僕にできることやったらなんでもするよ)
(ほんならな、あきらの後ろに隠れてな、ピージャーマジムンになんやらというてきたって。それもあきらの声でやで)
(なんやらって?)
(そうやなぁ。とりあえずほんまはぴーじゃーはおいしかったって。後は龍ちゃんにまかすわ)
龍二はそこまできくとある程度理解できた。
龍二はあきらの横にぴたっとついた。
(ピージャーマジムンさんごめんなさい。ほんとうはさ、ピージャーのほうがすきなんだよ)
すると、あれだけ暴れていたピージャーマジムンの動きがピタっととまった。
(だってさ、ウヮーよりピージャーのほうがずーっとずーっと美味しいにきまってるさー)
龍二がそういうと、ピージャーの角があきらのおしりからはなれた。
しかし、それをきいてたウヮーマジムンはそうはいかなかった。ウヮーよりもピージャーのほうが美味しいといわれて黙ってはいられない。するとまたウヮーマジムンが暴れだしたのだ。
(あちゃー、龍ちゃんいらんこというてからに)
(カイトー、ごめんごめん。ぼくもしまったおもうてん。なんとかするわ)
龍二はそういうと、今度はウヮーマジムンに向かっていった。
(ぼくさ、ほんとうはさ、どっちも美味しいんだよ)
しかし、両マジムンにはもう通用しなかった。ぶひっぶひっ、めーめーっとわめいている。すると、両マジムンは前後からあきらを挟み撃ちにすると、猛然とあきらめがけて突っ込んできた。この勢いでぶつけられるとあきらはひとたまりもない。龍二はなんとか両マジムンを引きとめようと、あらゆる手を使っているのだが龍二には目もくれない。
(ほんまになんぎなやっちゃのう。しゃーないな。ほんなら龍ちゃん、ウヮーマジムンの方にまわってや。まだ石厳當ちょっとはきくおもうねん。ほな行くで)
カイトはそういうとあきらの真上にきていた。
(龍ちゃん、なるべくウヮーマジムンけしかけてや)
(うんわかった)
龍二はカイトにいわれるがままウヮーマジムンの上に乗ると、お尻をたたき上げた。するとウヮーマジムンはさらに勢いがついた。もちろんピージャーマジムンもウヮーマジムンに負けてはいない。
両マジムンの勢いがピークに達したとき、あきらの目の前まで近づいてきていた。しかしあきらはこわくて身動きもとれない。
(龍ちゃん今や、飛べ)
カイトは叫んだ。そしてあきらの襟首を捕まえるとおもいっきり引っ張りあげた。すると両マジムンはものすごい勢いでぶつかってしまい、その場で気絶してしまった。
「あれれっ?、なんねーうぬ(この)マジムンたち、おかしいさーね。おれに逆らうからこんなことになるんだよ。なっ、龍ちゃん」
「ほんまやわーあきらくん。やっぱり鬼もマジムンもあきらくんにかかったらしょぼいなー。いっしょやったね。」
あきらは上機嫌だ。本当に自分でやっつけたと勘違いしているようだ。
(せやからいうたんや。おれもうしらんで)
するとその時しびれをきらしたのか、誠仁おじいがものすごい声でうなりをあげた。
「うりひゃー、マジムンたちよう。いったーはいちからようばー(いつから弱い)マジムンになったんじゃー。人間になめられてどうするんじゃー」
両マジムンはびびった。それもそうである。誠仁おじいは、また一段と大きくなっていて、ゆうに5メートルにはなっていた。龍二たちはもう、両マジムンどころではなかった。
(あーあ、怒らしてもうた。ほんまにおれ、もうしらんで。こんなんに勝てるわけないやん。龍ちゃんにげるでー)
(そやねカイトー、ぼくもそう思ってたとこや、にげようにげよう。だってぼくたちマジムンと戦いにきたんちゃーうもんね)




