空の冒険 4 マジムンより怖い誠仁おじい
「みんな、ちょっと待っててやー!」
すると龍二は、誠仁おじいの真上にきていた。
「こらっ!せいじんおじい」
「たるが・・・、わんゆぶしー?(誰だ、わし呼ぶのは?)」
「せいじんおじい!上や上!」
「ぬー?うゎーびー?たるがあびやーあびやーすーが、いったーすぐたっくるさんどうひゃー」(何?上?誰がわしをよんでる、おまえらなぐるぞう)
すると誠仁おじいは上を見た。月の灯りに照らされ、フワフワと浮いてる何かがいる!逆光で龍二の顔ははっきりとは見えていない。余程予期せぬことがおきたのか、誠仁おじいは腰をぬかしたようにひっくり返っていた。そして、まわりの人たちもおなじようにひっくり返っていた。
「いったーマジムンるやんな。はっしゃびようなー。えー、むるーよう、なーでーじーなっとんどーやー」(おまえらまじむんか。どうしよう。おい、みんな、もうとんでもないことになってるよ)
誠仁おじいは、口をパクパクいいながらうわごとのようにいっている。まわりの人たちも、ただ呆然と上を見上げてるだけだ。
(それつかえるな)
カイトは思いついたようにいった。
龍二は、ただ黙って見ている。
普通、人間にはカイトたちの姿は見えない。カイトがなにかしかけたのだろう。
龍二は、ちらっとカイトを見た。
(カイト、なにするつもりなん?それつかえるってどういう意味?)
(それはやなぁ・・・。まぁ、そんなことより、龍ちゃんこそいきなり誠仁おじいのとこ行くから、僕こそたまげたわ)
(そっ、そうやねん。僕、たまたませいじんおじいが暴れとったからなぁ、つい声かけてしまってんやんか!ほんで、せいじんおじい僕に気づいたから、僕めっちゃあせってんで!ほんまやでカイト)
(だから、これは面白いことになるなと僕思ってん!まぁ、僕の直感やけどな)
カイトは、龍二の突然の行動にあわせて、龍二と自分だけ人間に見えるようにしかけていたのだ。
(龍ちゃん、もっと面白いことしようや)
(えっ、面白いことって?)
(僕らの顔はやな、月の灯りで逆光になっていて、どうせ向こうには顔が見えへんねん。そやから、せいじんおじいがこれから悪させーへんようになんか懲らしめようと思ってんねん)
(そうやったんや。うん、わかった。ほんなら、あきらくんたちにいうとくわ)
あきらたちを見ると、誠仁おじいが怖いのか、龍二の後ろにに隠れている。
「みんなー、せいじんおじいになんかいたずらしようや」
「龍ちゃん、いきなりなにいってるねー!そんなことしたら後でひどい目にあわされるさね!そうだよねぶんじー」
「そうだよ、あきらくんのいうとおりだよぉ。龍ちゃん、せいじんおじいの怖さまだわかってないさー!マジムンより怖いってはなしだよ」
「そうだよそうだよ」
がっぱいとエーミも口をそろえていった。
たしかに誠仁おじいの噂は凄い。台風の日、ひとりでサバニー(漁師の船)に乗って漁に出るとか。台風で倒れそうながじゅまるの木をひとりで支えたとか・・・。大人の酔っ払い10人と闘って勝ったとか・・・。噂をいうときりがない!そんな誠仁おじいに龍二とカイトはなにをやらかそうとしているのか!
(龍ちゃん、いくで)
(あいよ)
龍二とカイトは再び誠仁おじいの真上に来ていた。
「おい、せいじんおじい!・・・、俺たちはきじむなーだ。毎日毎日酒ばっかり飲んで、悪さばっかりしてからに・・・。」
「そうやそうや、俺たちはきじむなーやねんぞっ!」
(しっ、龍ちゃんその言葉つこうたらあかん。龍ちゃんてばれるやん)
この村では、大阪弁使う子供はいない。龍二だけだ。
(ごめんごめん、カイトごめん!でも僕、こっちの言葉しゃべれんもん)
(いいよ龍ちゃん。僕にまかせとき。龍ちゃん、横におるだけでええから)
「おい、すすむおじい。俺たちはきじむなーだ。毎日毎日酒ばっかり飲んで、悪さばっかりしてからに・・・。」
「えー、さっき聞いたぞその言葉!はっしゃびような!(ビックリする!)あんしぇー(それに)、きじむなーがワシになんのようね」
「俺たちは平和の使者だ。今帰仁で悪さする物はは俺たちがゆるさないのだ。覚悟しろ」
棒読みにはなっているが、誠仁おじいは気づかない、ひっくり返ったままだ。
すると、龍二の右こぶしがせいじんおじいにおもいっきりげんこつを入れた。
「はいよー!ゆるしぃとぅらしぇー(どうかゆるしてください)、きじむなー様ー。なー、わるさーさんどうひゃー(もう悪いことはしません)」
誠仁おじいは土下座しながらいった。
これで終わりだと二人は思ったのだが・・・!?
「えー、くぬおじいよ。めーなちめーなち、ちゅうばーふーなーしちょうしが、ようばーやったんばー」(このおじいよ。いつもいつも、強がってたけど、ほんとうは弱かったのか)
スナックのママのその言葉が余計だった。負けずギライの誠仁おじいにとっては、その言葉は禁句だった。おとなしくなったと思った誠仁おじいは、それによって蘇ったのだ。
誠仁おじいは、ムクっと起き上がると龍二たちに向かって睨みをきかせ、そして何故か笑っている。
「うひゃうひゃうひゃ」
誠仁おじいは近くにころがっていた杖を拾い上げると、おもいっきりその杖を放り投げた。それは龍二とカイトに向かって一目散に飛んでいった!すると、二人は間一髪避けた。しかしその杖は、後ろに隠れていたあきらたちに向かっていった。ぶんじ、がっぱい、エーミはかろうじて避けた。
だが、あきらは避けきれなかった。あきらは自分の力では動けないからだ。案の定あきらに当たってしまった。
「あがーっ」(痛い)
あきらはうなり声をあげた。なんとか避けようと後ろ向きになった時、なんとその杖がおしりに突き刺さっているではないか。
「えー、ぬーえるばーが?。(おい、なんでか?)なんで俺だけこんな目にあうわけ?」
あきらはそういうと、杖が刺さったままの状態で狂ったように暴れている。遠くから見るとまるでかちゃーしーを踊っているようにも見えた。
(カイトー、なんとかしたってや)
(はいはい)
カイトはしかたなくあきらの所にいった。そして、杖を引き抜くと、やっとあきらはおとなしくなった。
(なんやそれ?痛いことあれへんやん。心配してそんしたわ)
杖は、あきらのおしりに突き刺さったのではなく、ズボンの股下に突き刺さっていただけだった。
カイトは、その杖をすすもおじいに向かっておもいっきり放り投げた。するとすすむおじいはその杖を、いとも簡単に掴み取った。
「うひゃうひゃうひゃ」
すすむおじいは、仁王立ちで高笑いしている。
(カイト!そんなマジになったらあかんで!相手はただのおじいやで!)
(なにいうとんねん龍ちゃん!こいつなめとったらこっちがやられてしまうわ。人間わざやないでこのくそじじい!)
(げっ、そうなんや)
龍二は誠仁じじいの怖さを知らなかった。
(・・・・・、やっぱりあかんわ。龍ちゃん、逃げるで)
カイトはそういうと、あきらをひっぱり逃げた。みんなも後をついていった。しばらくいくと龍二はだまって笑っている。今が楽しくて仕方なかったのだ。




