表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
98/142

錆びついた灯台の料理人


 私はそれから離婚した。


 25回目の結婚記念日。LEDの電気に照らされた部屋に何故か影が落ちている。どこかしこに色を塗ってあるみたいにグラデーションに暗い。


 私は長方形の机の上で麦茶と氷の入ったグラスを揺らす。傍目に読みかけの文庫本が目につく。


「ごちそうさま」旦那は小さくそういうと、そそくさと夕飯の洗い物を済まし、自室へと篭る。


 私は今日の日を思い出して、旦那の部屋へと向かう。戸の隙間から光が漏れる。机に直向きに何かをバリバリと書いている。


 手紙では無い。あの人が資格マニアというものに当てはまることをこの前、仕事場の若い後輩の女の子から聞いた。目的の前に資格取得が来て、取ろうといつも勉強している人のことを言うらしい。数年前から、もういくつの資格を取ったのかすら知らないが。


 それを見て、部屋へ向かうのを辞めた。リビングに戻り、さらに暗く感じる空間へと入り込み、椅子へと腰掛ける。私は文庫本を手に取る。料理中でも油はねが気にならない様に桜色のカバーのかけられている。読む。


 読書が好きだった。旦那とも本好きという点で話があって、付き合い、結婚した。子供ができてからは自ずとそういう時間が取れず、2人とも読書から手が遠ざかっていた。


 私は活字を見る。内容に特にこだわりは無いが、今読んでいるものは現代社会における若者の心情をありありと写したものだ。どうやら今は『推し』という言葉の中で、他者との関係と自分の生き方を語るのが流行るらしい。確かに興味深い。自分の生き方、それそのものが若々しい、そう思い微笑む。


 私は少し良い気持ちになる。同時に旦那の部屋を見た。いつも開く隙間からは光だけが漏れている。


 共有したい言葉は胸に浮かぶ、けれど私は椅子から立ち上がらずただ光を見るばかり。


 自分の生き方。本を見る。共有したい言葉が頭に浮かぶ。扉を見る、文庫本触る、光を見る、本を拾い上げる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ