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止まった扇風機
止まった。風を生む羽根が一つ残らず、提示してその回転が終わる。
「ねぇ、止まっちゃったよ」
「本当だ。壊れたかな」
父親が扇風機のあれこれを見る。中を開けたりはせずに、駆動部を少し見たり、コード部の接続を確認したり。
「分からないな、これは」
「暑いよー、お父さん」
私は困った顔のお父さんに向けて、追撃の言葉を放つ。父の額から汗が流れ落ちる。私は立ち上がってベランダに向かう。
「ねぇ、お母さん。扇風機止まっちゃったよ」
「えー、お父さんは何て言ってるの?」
「分からないって」
「そうかー」
言葉の語尾が夏の熱で伸びる。私は母が洗濯物を干しているのを後にして、部屋へと戻る。
「お父さん、エアコンつけて良い?」
「そうだね、つけようか」
私はリビングの机まで走り、リモコンをとって操作する。電源をいれ、冷房にして、ピピピピピピピピ。
「まきちゃん、そんなに温度下げないで。お母さん、エアコンの風って苦手なの」
「はーい」
ピピピピピピ。
って言う事があったよね。
「お父さん。もう少し温度上げてくれない?」
「寒かったか?」嗄れた喉、浅黒く皺だらけの肌の父。
「いや。お母さん、嫌がるかなと思って」
「そうだね」
夜は長い。夏の白布がのる母。




