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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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92/93

崩れなかった石膏像


 鉛筆が擦れる音。カチャリと木材と木材がぶつかる音、コンクリートの建物の四角い窓からオレンジ色の夕日が差し込む。


 毎日の様に、部室の中にある石膏像。その一つが前にある。


 イーゼルに向かう。その形が黒炭の載せるたびにその形が徐々に浮かんでくる。ぼかして、光を抜いて、毎日の様に繰り返す。モチーフは変わるが、行いは変わらない。黙々と静かな空間の中での作業。


 私は今、向かい合ったそれをこのカルトン上の紙一枚に存在を増加させている。線は増え、形は明瞭になり、影と光が線の無い塊に立体感を生み出していく。


 本物と相違ない。それを目指して筆を進める。立体を平面に起こす事、平面が立体になる事。これは同じ事であると思う。時間軸を廃せば、写真の中の私と現実の私は全く持って同じ存在であるはずであるからだ。


 私はその石膏像を紙の一つに写しとっていく。その細部の陰影の一つも見逃さず。ノミを立体物に掘り込む様に炭を載せる。


 ようやく出来た。僕は徐に立ち上がり、後ろに下がり、像とデッサンを見比べる。ふむ。


 前に進む、前にもっと進む。手で石膏を撫でる。その触り心地を確かめてモチーフの質感を改めてみる。そして、それを夕日にかがける。


 床はパリという音と、ゴッという音を織り交ぜた。落下した。石膏像はバラバラになる。見るも無惨に。


 私はそれを回収して、バックに入れて。代わりにバッグから新たな石膏像を取り出し、前割れた石膏像があった場所に置いた。


 微かに違う表情が二つにはある。分かるだろうか、私は毎日違うモチーフを描く。パラパラと過去のデッサンを捲る。それはほとんど動かないが少しずつ違う。


 私はものにしている。立体と平面は同じものであり、立体は存在を失い。平面が残る。


 私はまた椅子に座る。鉛筆を立てる。


 

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