止まらないエレベーター
恋はジェットコースター、などという輩がいる。これは違うと僕は思っていた。ぼんやりとだが。
エレベーターは上へ向かっていた。会社のエレベーター、搭乗者は1人。
ある階で止まる。
「やぁ、おはよう」同期の同僚の声がしたのでスマホから顔を持ち上げる。
「おはよう」
「すぐオフィス戻る?」同僚は人差し指と中指を立ててひょいひょいと振る。
「辞めろって言われてるんだ、タバコ」
「彼女?」
「そうだ」
この取り決めをしたのは随分と昔だった。タバコを匂いが嫌だからという理由で止められた。ずっと自然と吸っていなかったが、この時はその取り決めが頭に出てきた。
ゆっくりとエレベーターは昇る。止まることはなく着実に進んでいる。
「長いよな、彼女」
「まぁな」
「良いじゃないか」
「長いだけだ。ひどいことも言われる」
「例えば?」
「浮気したいとか、他の誰々が好きだとか。機嫌が悪ければ無視をするが、無視されるのは嫌だとか」
「それは酷いな。別れないのか?」
「本当にもう降りたいのだがな」
昇るエレベーターの中で一つ、スマホが揺れた。
「彼女か?」
「そうだ、こっちから始めた会話の返信だけどな」
「なんて言ってる?」
「嫌だとさ」
「何が?」
「さぁ、どういうことだろう。オフィスの一つ下の階で俺も降りる」
「彼女との約束はどうした?」
「まぁ良いんだ。降りた者勝ち」
「よく分からんな」
そう言いながら、2人は喫煙所へと向かった。エレベーターは1人でに上へと向かい続ける。




