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焦げ跡残る換気扇
「ちょっと出る」というこちらからの連絡。LINEを見る。相手から返信なし。寝息の部屋を思い出す。
朝8時にここを通ると、大衆中華の店がある。そこの換気扇からは様々な調味料の匂いが漏れ出していて、鼻をくすぐる。
初めて、入店ベルを鳴らした。
「いらっしゃい」
「早かったですか?」
「いや、ここは朝も開けてる。サラリーマンがよく使うんだ」
「では、半チャーハンを一つお願いします」
あいよ、という店主の声に僕は伸びた背筋を緩め、椅子の背もたれに体重を預ける。
ふと、換気扇を見た。外からよく見ていたそれはクルクルと速くないスピードで回る。羽根にはそれぞれ黒い汚れが目立っていて。
炎が立ち昇った。燃える調理場、高く登る。熱くひりつく、換気扇は。羽根は平等に焦げ付いていて黒い。ちりちりと焦がす熱。
自分の肌を擦ってから、コップの水を一飲みにする。
「はいよ、半チャーハン」
「ありがとうございます、いただきます」パラパラとしたチャーハンをかき込む、美味しい。
その時、ピコンとLINEが一件入った。『ねぇ、あのさー……』その続きは見なかったけれど、換気扇が回り始めた音が聞こえる。
ピコン。回る。




