風の止まった風車の羽根
凪、海は動きを止める。海に目を奪われていた私は急に現れた赤信号に動きを止める。ヒヤッとした体に汗がにじむ。自分の姿を見る。あ、そうか、今日は仕事着ではないのか。
空色のワンピース、麦わら帽子。
たまに私は海を訪れる。何気ない日、何も思わない日にこそ私は海へ出る。軽の荷台には少しの荷物を乗っけて。
「この浜は相変わらず風が弱いな」車の扉を押し閉じて、外の空気を感じる。冷たい空気。日差しも手を抜いている。
パラソルにレジャーシート、海らしさを浜に置いていく。砂浜、赤白赤白赤白、砂浜。
私はぐっと背中を伸ばすと、後ろに麦わら帽子が落ちた。それをのんびり拾うと、背景に広がる雄大な高原と風車が見える。
風車は煉瓦造りのオランダをイメージするものではなく、まるでワイシャツを着込んだような風力発電のものだ。
最近建てたのだろうか。景色とはミスマッチを感じた。けれど、私はどうにもそれを見つめていたい気になった。白い体はシャープにきっちりとしていて、けれど羽は一枚たりとも動かずにただそこにある。
凪、今だけ動いていないだけ。
私は持ってきたバスケットからサンドイッチを取り出す。噛み締める。レタスから水が滴り落ちて、トマトが酸味と甘みを主張する。ハムは甘く、手作りのソースが包む。
私は思わず笑む。噛む。笑む。
凪、私も風車も海も。




