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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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崩れかけた灯籠の炎


 私は灯籠に火をつけて回る。慣れた動作で、一つ一つに入っている燭台に持ったチャッカマンで着けていく。古の苔を積もらせた灯籠に、チャッカマン。並べたそれを見て、私は歪む。


「おかえり」父は言う。


「うん」私は返す。


「何も無かったか?」父は続けていつもそう言う。敷地内の灯籠を着けて回った程度のことで、何かあるわけも無いだろう。


「あのさ、私、昔から思ってたんだけど夜も開ける必要あるかな」


「必要だよ。人が困る」


「困るって、そんな人、少数じゃない?」


「そうだね」


 それ以上父は言葉を作らない。目の前の祝詞の作製に集中し始める。拙く、汚い字だった。


「お母さんはいる?」私はぶっきらぼうに言い放つ。


「今日は夜勤で帰るのは23時くらいになるって言ってたよ」


「あそ」


「ご飯は作ってあるから、食べておいて。24時から僕も仕事に行くから。母さんと家任せるね」父は私の方を見ずにそう言った。


 参拝場の横を通り過ぎる。襖で閉じられた部屋。中に人影が見えたが、私は不恰好な襖の紙を見ていた。紙は襖一枚で貼り替えず、一つ部分で貼り替えていて色が違うし、皺がある。


「あの、この神社、灯籠の火はチャッカマンでついてます。祝詞の字は汚いし、神職はほとんど副業みたいな人が営んでます」


 私は歪んでいた、そう思う。誰もいないよ、こんな中途半端なのに。襖に手をかける。言ってやる。


 参拝場の中の人影、コロコロと笑う小さいものがある。2つ。


 私は襖の手を見た。そして下ろした。人影は火で輪郭を揺らして、ぼやかしてから。


 踵返し、歩く音。自室への道は暗く歪んで見えた。


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