錆びついた観覧車の影
『強風のある日は運転を見合わせております。ご了承ください』この文言に合わせて遊園地のキャラクターがぺこりと頭を下げている。
「乗れないんだって」
「なるほど」
私は先に見た文言を彼に示す。
「風吹いてる?」
「僕は吹いてないと思う、少なくとも」
私は少ししょぼくれる。しかしながら、動いていないものを動かせという様なことを言うのは違う。観覧車の高さで上下の風の強さに差があるのか、運転は見合わされている。
パシャリ。
「ちょっと何撮ってるの」
「いや影見てみて」しゃがみ込んでいた私の下に観覧車の影が映り込む。
「乗っているみたいじゃないか?」
「まぁ、確かに」
「次来た時には乗れるといいね」
「うん」
そう言って私はその日観覧車を諦めた。
「あなたの後ろ手に指輪があったなんて、その時は気づかなかったな」一枚の写真を見ながら私は言う。
「観覧車の上でプロポーズがお決まりだったんだよ、当時は」
「でも、今日は風はないよね」
「ないね、間違いなく無風に近いと思う」
私は一つの看板を見つめる。今度は二人同時に。『経年劣化のため、運転を見合わせております。ご了承ください』この文言に合わせて遊園地のキャラクターがぺこりと頭を下げていた。
錆びついた観覧車の骨組み。確かにこれに乗るのは怖い。
「影はあるよ」
「2人で乗る?」
「うん」
私達は観覧車の影に乗り込む。握られた後ろ手には指輪が2つ光る。




