表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/92

割れた鏡の待ち合わせ


「今どこにいる?」額に滲む汗。上がる息。私は声を出す。


「どこって駅に来てるよ。駅の構内にあるコンビニにいる」


 目の前にひかる緑の光。コンビニの光。コンビニ内に彼氏がいるのだとすれば、じゃあ、すぐそこにいるはずである。


「いらっしゃいませー」という呑気な声は私の頭に届かない。動きに空気が追いつかない。雑誌、日用品、機械類、乾物、乾麺、お菓子、酒類、食品、そして奥の食品。


「どこ?」私は突き当たりにある鏡を見る。私が見える。


「……」


 なぜ言葉が聞こえない、なぜ言葉を発さない?私は思うが、目の前にある鏡の私を見て、少し落ち着く。突き当たりの鏡は手洗い場のもので、その右にはトイレがある。


「トイレにいる?」淡い期待に言葉を作る。


「いない。普通に雑誌コーナーで本読んでるよ」


 雑誌コーナー、そこにはいなかった、確かめた。


「いないよ」


「いるって、北口のコンビニだよ?」


 北口。私がいるのは南口である。色々と思いながらも、私はもう一度鏡の私を見て落ち着き、走り出す。


 駅の構内、中央には鏡を複雑に組み上げたオブジェがある。私はそこまでたどり着いたところで下を向いて、手を膝につく。


 鏡は私を写す。色々な面に色々な顔の私。向こうから彼氏が来ているのが見えた。


 私はコツコツとヒールを鳴らして近づく。そして、相対する。


「北口なら言っ……」


「別れ話だろ。お前が会って話したいって言ったんだ」


 心が割れかける。


「別れたくない」


「別れる。会わなかったら、良かったと今も思ってる」


「お金返すから」


 彼氏の顔は崩れる。崩れて、暗闇で見えない。だから、私はオブジェを見る。鏡に写る彼の姿を見る。されど私には見つけられない、私ばかりが写る。


 私は彼と共に写らない。ビシリと割れた。私がもう1人見える。それもまた共には写らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ