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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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閉まらない冷蔵庫の音

 

 昔、私が小学生の頃。冷蔵庫というのは時間が止まるのだとばかり思っていた。


 子供の頃の感性というのは面白いもので、寒さというのがいつか見たタイムスリップものの映画と結びついて、時間が止まるのだと確信していた。そんな子供だった。


「お母さんは私がそんなふうに思ってるって、知ってた?」


 素朴に私がそんなことを質問すると、素朴に答えが返って来る。お母さんはなんでも知っていた。私が冷蔵庫が時間を止めると思っていたことも、だから冷蔵庫に色々な物を入れていた事も。


「いつも笑って済ますから気づいてないと思ってたよ」


 本当にそんな風に私は思っていた、我ながら呑気に。でもある時、限界が来た。冷蔵庫だって容量があるし、母が私の入れたおもちゃとかを毎度取り出していたとしても、あまりに大きな物を入れるとそれは無理になる。


「開いてたんだよね。冷蔵庫の扉」


 大きめの綿がふわふわのテディベア。それが汚れていくのを私は年老いたのだと思った。だから入れた。


 閉じれない扉。中からは轟々と冷気を一定温度を目指して吐き出す冷蔵庫の音。母がそれに気がついたのは、仕事から帰って来てからだった。


「あれは怖かったよ。冷蔵庫の音とお母さんの背中」私は母と面と向かって言葉を発する。


 時間が止まっていた。冷蔵庫などとは比べ物にならないくらい。それくらいの迫力。


「お母さん、もう一度叱ってよ」私は呟く。


 私は母の冷たい手を握る。母の顔は動かず、綺麗な純白のベッドで眠る。


 静かな空間。実家の冷蔵庫は開かずに閉まっている。轟音も鳴らさない、母の声をない。


 冷蔵庫は時間を止めはしない。


 

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