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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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静電気の残り香


 バチリっと音が発生する。痛みと音が近づきかけた2つの体を一定の距離まで離し、その生まれた隙間には冷えた空気が流れ込む。


 僕は静電気が嫌いだ。


 突然の痛みが神経を伝う瞬間、脊髄から脳にかけて僕の中にはストレスが生じる。逃げ場のない憤懣、その様な気持ちを想起すると何事も嫌になるのだ。


 小さな電気に僕は揺れる。


「……もう仕事に行かなくちゃ、時間がない」


「いってらっしゃい」ぼさぼさの髪の毛、哀しげな顔の彼女が僕の方へと手を振った。行き場が無かったのか、両の手で。


 対して、迫る時間に僕は急いでいたので半身だけを見せた形で片手で手を振りかえした。扉が閉まる。


 自転車が空を切る。肌の水分を少しずつ空気達が分配して流れて行く。奪われる熱の多い事、呼応して血流が内側から熱を回す。けれど、総計量、芯を冷やす。


 手の表面が皺から割れそうになるっている感覚、そこで僕は今日手袋を忘れたことに気がつく。家にある。


 戻ることはできない。時間がないから。体はどんどんと芯から冷えて行く。


 急ぐ体に赤いランプが緑黄色から点灯する。急ブレーキ、軽く熱気立つ体からふわりと香る。


 あの部屋の彼女の匂い。静電気で辞めたあの距離の接近でついた小さな匂い。静電気に乗った残り香。僕の震える手。


 僕は思う。あったはずの温もりを。


 まだ赤のランプが点灯する。

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