片方だけの手袋
部屋に片方だけの手袋が転がる。それは私の手のサイズよりも大きい。
手袋は部屋の隅に転がり、私はそれを流し目に見て出かける。
美容室で散髪をする。見た目から綺麗になる髪、新たな可愛さを私の中で見出してくれるそれは人生において他に変え難い。
「みのりさん、今日もありがとうございます」担当の女性スタッフの金本さんが私に声をかけてから、私の髪の毛を調節し始める。
鏡越しに見える髪。それは随分と艶のあるもので、それが自分のものであるという事を考えて頬が緩む。過剰なまでの白い発光、美容室の中はこの光で多くの要らないものを隠す。けれど、私は自分の肌のくすみがやけに気になった。
「金本さん、肌がお綺麗ですよね」そう、パールの様な凹凸のない白の肌を保つスタッフに声をかける。
「私は……」と金本さんが話し始めたところで、私は自分顔から目が離れなくなる。白い発光、綺麗な髪と欠けた肌。
「ありがとうございました」そのような明るい声が私の耳に残った。
店を出て、16時。家に帰ると18時を回っていた。こんな事なら、行きつけの美容院は自分の家の近くにするべきだった。
私は玄関を開ける。中は暗い。
リビングの明かりをつける。暗く感じて、リモコンで全灯させる。
全身鏡、綺麗な髪の私が映る。
部屋の片隅に転がる片方だけの欠けた手袋。それと私。




