幽霊の砂時計
私は砂時計を見つめる。一つの面には『さとみ』って赤い文字で書いている。無論、落ちる砂つぶに名前は無いが私は見慣れた名前よりも、名無しの砂つぶに目が行く。
「砂時計、それってそこまで正確じゃ無いらしいよ」友達がそう言った。
「え、そうなの?」
「そうだよ。安物だったら何十秒も違うものもあるらしいよ。今みたいにカップ麺を作るのに使うのはよろしいとは言えないかな」
隙間から湯気が漏れるカップ。私はその隙間を指で押して閉める。
「すごいズレてるかな?」
「さぁ」
「さぁって、砂時計の話を言われなければ私は最高に正確なカップ麺を食べてたのに、責任感じない?」
「別に感じないよ」
砂は落ち続ける。3分を測る体で何分か分からない時間を目指している。
「もうすぐ3分だよ」
「分かるの?」
「砂時計がもうすぐ落ち切るじゃない」
「正確じゃ無いって言った」
「らしいって言った」
私はカップ麺の蓋を取り外す。少しばかりかき混ぜて、麺を啜る。
「なんか微妙に感じる」友達は返さない。私は砂時計をひっくり返す。
「でも美味しいでしょう?」
「美味しいけど」
「カップ麺は美味しいことが役割、砂時計は砂を落とすことが役割、それか3分くらいを測ることかな」友達はそう言う。
私は麺を啜る。
「あなたは?」私は聞く。
「私はミナよ。砂時計にも書いている」
砂時計のもう一つの面には『ミナ』と青い文字で書かれている。
コンコンと部屋がノックされる。
「誰かと話してるの、さとみ?」母が言う。
部屋は1人。
「ミナの家行く」
「……そう、私も行くわ」
砂時計の砂つぶは落ち切る。




