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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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割れないコップ


 私は湯気の立つプラスチックのコップを両手に握り込む。


「何飲んでるの?」彼が私に聞く。


「コーヒーだよ。結構深煎りの粉らしくて苦いけど、淹れようか?」


「うん、お願いする」そういう彼は食器棚から陶器のマグカップを一つ取り出す。私は椅子から立ち上がると、そのマグを彼の手から受け取る。マグには金色の線が継ないである。


 インスタントのコーヒー粉をカップに貯める。


「このマグカップずっと使ってるね?」


「そうかな。大学の3年の時にもらってからだから、まだ5年くらいじゃない」


「長いじゃん」マグの中にお湯を注ぐ。


「新しいの買ってあげようか?」


「いや、大丈夫」マグを受け取る。彼の顔には柔和が浮かぶ。


「金継ぎ出来るの?」


「いや、出来ない。これをしたのは僕じゃないんだ」コーヒーを見つめて、少し飲む。熱に怯えて、恐る恐るといった様に。


「じゃあ尚更新しいの買った方が良いんじゃないの。ほら、なんかコップって恋人があげるのが自然じゃん?」


「まぁ、そうだね。確かに自然だと思う」


 私は少しだけコーヒーを飲む。口に苦味が広がる。

「そもそも、私のこのコップだってあなたがくれたんだし」


「そうだっけ?」


「そうだよ」


「……そうか」そう彼は言って、コーヒーを啜り始める、心底大事そうに。手には金継ぎの入った陶器のマグカップ。


 私も彼に合わせてコーヒーを飲む。大きくグイッと。プラスチック製の割れないカップで。


 苦い。

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