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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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冷蔵庫の卵


「卵、1つ残ってるな」それを確認してから、私は今日買い込んだ食料品を冷蔵庫に入れていく。ネギ、大根、白菜、キャベツ、鶏肉、豚肉ひき肉。それと10個入り卵1パックと6個入り卵1パック。後者のパック、その1つは私がいる間に使い切る。後は置いておく、いつも。


 これくらいもあれば大丈夫、心で話す。3日に一回、通い彼女。


「今日泊まってくの?」男の丸い声。


「明日の昼ごはんまではいるよ。それから帰る」犬の様にキャンキャンと寄ってくる彼氏に私は言葉と笑顔を返す。


「じゃあ、菜々の料理が3回食べられる訳だ」


「朝は眠たいから作らないよ。卵かけご飯でも食べてな」


「えー、俺料理できないよ」


「こだわらない卵かけご飯は料理のうちに入らないでしょ」


「そうかなぁ」


 私は豚ひき肉を取り出すと作業を始める。


「晩御飯、何?」


「ん?ロコモコだよ」


「ロコモコ?」


「知らないか。ご飯の上にハンバーグと目玉焼きを乗せたハワイ料理」


「ふーん、知らない」そう言って彼はキッチンを後にしようとする。


「ちょっと待って。今、ハンバーグのタネ作ってる所だから先に目玉焼き焼いといてくれない?」私の意見に彼氏は怪訝そうに視線を送る。


「出来ないよ。焦がしちゃう」


「あぁ、そうか」少し深呼吸をする。私は言葉を続ける。


「じゃあ、その卵。残ってる1つ出しておいてくれない?」


「それなら、お安いご用」


「ありがとう」


 私の言葉を聞いてから、彼氏は風の様にヒュルリと居間に移動しようとする。


 卵を熱したフライパンに落とす。


「そういえば、ロコモコってね。スペイン語で『クレイジー』って言う意味があるんだって」


 卵にガリガリと熱が浸透していく。彼氏の他愛無い返答が小さく聞こえる。


「後、ちょっと意訳だけれど『大胆に遊ぶ奴』って意味もあるのよ」


 白身がじわじわと柔らかさを失って、堅固に変化する。箸で黄身を撫でる。煮え立つそれを私は固まる前に刺し割った。

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