小さな灯りの窓
「まだ起きてるのか?」息子の部屋を開けて一声かける。
「あぁ、まだ起きてる」
机に向かう息子は勉強教材に目を落としたまま、言葉を返した。
「部屋の電気はつけて勉強した方が良いんじゃないのか?」
「いい、スタンドでも十分」
「暖房は?」
「いいって」
机の上の手元を照らすくらいの小さなスタンド。それを見て、更に声が出そうになったが口を閉ざす。居間へと移動する。
薄暗い居間にある机の上には2つ塩おにぎりと水筒が置いてある。それらを手に持ってバックの中へと詰める。
時間になるまで待つために椅子にどっかりと座り込む。ひんやりとした空気、仄暗い部屋の雰囲気が思考をぼんやりとさせていき、溶けていく。
ピピピというアラーム音が空気を揺らす。
「行くか」ぐっと力を込めて、体を持ち上げる。持ち上げた体、軋む膝を動かして妻の前まで辿り着く。
「それじゃ行ってくる」小さく声にする。彼女は微笑む。
ピッと言う音と共に部屋の電気が付けられる。突然の全灯に目が眩む。
「電気つけろよ」ぶっきらぼうな声と佇む息子。明かりに慣れ、供えられた写真の中の妻の姿が見えた。先程よりもはっきりと笑った顔が。
「もう行くのか?」
「あぁ、行ってくる」玄関に進む私の後ろから息子が付く。
「昼に働けないの?」
「夜勤の方が給料が良いんだよ」
「……そんなに違うのか」
「じゃあ行ってくる」
「あぁ、行ってらっしゃい」
外は大分冷え込んでいた。ふっと後ろを振り返って家を見る。一つの窓に小さな光が見えた。




