20/92
雨に待つ日
下校チャイムを下駄箱の前で聞いた。濡れた靴。傘立てから傘を取る。
「よう」
「雨だねー」
同級生が1人雨の前に立ち尽くして、言葉を俺に向けた。
「帰らないの?」
「……ふーん」彼女はそう言って、こっちの顔を見る。
「雨で濡れて帰るのかか、傘貸そうか?」
「良いやつだね。でも良いのさ、あと10分もすればこの大雨は随分とましになるみたいだよ。だから、そう今進めないだけなんだ」
「そうなの?」言われて、スマホを取り出して天気アプリを開く。
「君は旅に出たいって思ったことある?」
「ん、旅行じゃなくて?」
「そう、旅」
目の前の雨が落ちるのを俺は眺める。何度も上から下へと。
「自分探しの旅みたいなこと?」
「あぁ、まぁ、うん、そうかも」
「あるね。隣のクラスのやつも今日同じような事を話していたし、俺も将来どうなるかとか見つけに行きたい」
言った後に彼女の顔を見る。雨だけを見ている。
「部活ないの?」
「え?」
「だって雨の事に悩んでた訳じゃないらしいし、部活動のことかなとか」
「ふーん」
「え、俺変なこと言った?」
「……いや別に、でも雨だよ」
「俺は帰るかな」
1人の足音だけが雨に進む。




