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約500文字の毎日  作者: 芋蟲 言生


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空のマグカップ


 キッチンに素材の匂いが舞う。コーヒーセットが揃った室内の一角に向かう、空のマグカップを持って。


 コーヒー、紅茶、ミルク、グリーンティー、砂糖、レモン、ミント、シナモン、ハチミツ。どれにしよう。


 どれでもすてきだ。


 産後、私はコーヒーや、他の飲料を飲む。カフェインを摂りすぎるといけないから数日に一回の楽しみに。


 私の母はとてもポジティブな人だ。明るい。優しい。シナモンみたいな。


 今日は紅茶の気分だったからそれをメインにする。


 チャイが飲みたくなったがカルダモンなんてない。けれど本格的な物にしたいという思いもない。


 小さなティーポットにお湯と茶葉のバックを入れて煮出す。ゆっくり、急かさずその色が出てくるのを眺める。


 私もポジティブだ、母譲りだろうと思う。父は寡黙で時々しっかりする。ミントみたい。


 湯の色を確かめ砂糖、ミルクを入れる。あぁ、シナモンは外せないな。


 さぁ、なんちゃってチャイが出来上がった。


 チャイをカップに注ぐ。ゆっくりと。


「良い匂いだね」


「そうっしょ」


「俺の分もある?」


「あるよ」


「向こうで飲もうよ」


 夫が自分の分と私の分、2つのマグカップを居間にある机の上に置いた。


「これも入れて」私はそう言うと、ミントを彼のコップに浮かせる。


「合うの?」


「合うと思うよ」


 そうか?と言いながら恐る恐る飲む夫。その横で私も飲む。


 暖かくて甘くて美味しい。

 

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