空のマグカップ
キッチンに素材の匂いが舞う。コーヒーセットが揃った室内の一角に向かう、空のマグカップを持って。
コーヒー、紅茶、ミルク、グリーンティー、砂糖、レモン、ミント、シナモン、ハチミツ。どれにしよう。
どれでもすてきだ。
産後、私はコーヒーや、他の飲料を飲む。カフェインを摂りすぎるといけないから数日に一回の楽しみに。
私の母はとてもポジティブな人だ。明るい。優しい。シナモンみたいな。
今日は紅茶の気分だったからそれをメインにする。
チャイが飲みたくなったがカルダモンなんてない。けれど本格的な物にしたいという思いもない。
小さなティーポットにお湯と茶葉のバックを入れて煮出す。ゆっくり、急かさずその色が出てくるのを眺める。
私もポジティブだ、母譲りだろうと思う。父は寡黙で時々しっかりする。ミントみたい。
湯の色を確かめ砂糖、ミルクを入れる。あぁ、シナモンは外せないな。
さぁ、なんちゃってチャイが出来上がった。
チャイをカップに注ぐ。ゆっくりと。
「良い匂いだね」
「そうっしょ」
「俺の分もある?」
「あるよ」
「向こうで飲もうよ」
夫が自分の分と私の分、2つのマグカップを居間にある机の上に置いた。
「これも入れて」私はそう言うと、ミントを彼のコップに浮かせる。
「合うの?」
「合うと思うよ」
そうか?と言いながら恐る恐る飲む夫。その横で私も飲む。
暖かくて甘くて美味しい。




