表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
141/144

ただの雨音


 いかんせん、雨の日に思い出というのがあると言うのは良いことではない事の方が多い。雨の日は古傷が痛むとか言うじゃないか。雨っていうのはそういうものなんだ。


「何かあったの?」


「うん?」


「雨の日、古傷とか言ってるからさ」


「どうだろうか」


「振られたとか?」


「振られてないね」


「誰か大事な人と今生の別れを経験したとか」


「ないね。両親も、両祖父母も元気いっぱいだよ」


 私は自分の境遇を思い出すが、雨の日に関する思い出というものがほとんどない様に思う。雨の夜、網戸に向かって、隣で笑う友人は缶ビールを煽りその頬はほのかに赤くなる。


「あたしはあるよー、はぁ。あんたは良いよね。可愛いし、男に振られる経験なんて無いでしょ。ひくっ」


「まぁ、確かに男性と付き合った事すらないですが、だから振られる経験もないですが」


「まぁー、羨ましい。可愛いのに、付き合わないのはそれはいいご身分ですよ。あたしは雨の日は痛むね、心が痛む。元彼は雨傘をさしてくれたのが初めての出会いだったのに」


「出会った当日にすぐ電話で聞いたよ。その話、本当によくするね」


「するよそりゃ、雨の日になると思い出すの。その毎回を。元彼を」


 だらしなく元彼の話をする友人の横顔をずっと見つめる。


「私だって、でも雨の日は痛む気がするよ」


「慰めないでくれよ」


 慰めてる訳じゃないよ、本当に痛む気がするよ。ただの雨音だって思いたいけれど。意気揚々と電話口に語るあなたの声を思い出して、雨音に混ざって痛む。


 夜、ただの雨音。思い出とも言えないもの。疼痛。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ