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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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白紙のノート


 私の目の前に白紙のページの残ったノートがある。利用の仕方としては、私のささやかな生活の一部を日記として書き記していたものであるが、見返せばその大半が料理のことだった。醤油と塩の数値が徐々に減るレシピに切り替わるのが年老いるという事をありありと示す。


 私は過去に対して一辺の空いた食卓に座る。漬物はいつの間にか塩漬けから酢漬けに、肉は大豆に変わる。白米に固さを感じるようになったのはいつからか、そんな話を娘にしたら、歯に気を遣う事を勧められた。優しい娘だ。よく私の家へ訪ねてくれる。


 食事を終えて、ノートを再度見つめる。老眼鏡は欠かせない。この行動の些細な煩わしさの連続を娘はムッスリとした顔で見つめた。


「歳をとると行動が増えるよね」娘の言葉に確かにとも思う。一度やった事を忘れてもう一度やったりもする。それも少なく無い。正常な範囲のボケだ、かかりつけ医はそう言う。


 ノートは書き込んでいた3年前で終わる。もうそれほど経ったのかと、時間の速さを改めて実感する。パラパラとページを捲る。白紙がずっと続く。


 このページは私の人生を書き記していた気がする。そうであるならば、この残りのページは、この自分の残りの人生よりも長く残っていそうな白紙のページは何の為にあるのだろうか。


 私はゆっくりと鉛筆を下ろす。スッと確かに。


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