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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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ぬるい炭酸


 私はコップの中の水を見つめる。気泡の一つすら存在し得ないその中を覗けば、向こう側が透けて見える。鏡の中には過去が映るという、実際的な数字として光の速度とその認識までの僅かなタイムラグが存在するのだから、鏡の中に確認し得る像というのは紛れもなく過去のものではある。


 ではガラスの中の先の景色はどうだろうか。私の机の上には鏡もあって、ガラスから水を越して曲がって反射した光が更に鏡に映る。この過程を踏んでもそれほど過去には遡らないだろうけれども。


「おはよう」母の声。


「うん……おはよう」私は素直に返事をしたつもり、けれど母の顔はやや曇ったように見えた。


 それを振り払って、また水を見る。その先の鏡には黄色い液体が見える。賑やかな喧騒とワイシャツと香水と汗と油と塩味と旨みと甘み。茶色と黄色が入り乱れて、それが光の明滅を思わせて、私に飛び込んでくる。


 最初はコレという規定が私を困らせる。美味しいから、大丈夫だから、そう言われて黄色い液体が私の前にもやってくる。宴は進む、私はパチパチと手を打ちつけて、男の話に対して、盛り上げの音を作る。笑顔を忘れずに添えて。


 私のジョッキにはいつも割り箸が入っている。それが炭酸を盗み取る。温度は室温にならされて、それが無くなる頃にはお金の音がする。


 やや食べた串とサラダに数千円を払う。私は何を言うこともできない。小さく毎日、自分の中の気泡を抜く。

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