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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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動かないトカゲ


 私はガタガタと音がする家具の方を見つめる。椅子から立ち上がって、揺れるガラス棚を見る。横開きのレールに嵌め込まれたガラス板はすぐに動きを止める、けれど動作を続けさせる者がいる。


「何してるの?」私はそこにかがみ込んで、小さな生き物に焦点を合わせる。その私に気がつかないみたいで、ずっとそれはガラスに首を振り、ぶつかり、当たる。


 メスのフトアゴヒゲトカゲ、もう飼いはじめて4年になる。彼女が大人になってから、この動作はもう慣れっこだった。首を振るこれは、ボビングという動作で、力強くしているものは威嚇やゆっくりやつまでいるものは降伏の表現だったりする。それと求愛だったりもする。


 フトアゴヒゲトカゲは卵生で、卵の時の周囲の温度によってオスメスが変わる。ワニに似てるが、ワニはオスメス共通の染色体。トカゲの方は別の染色体を持つけれど、温度でオスの染色体でメスが生まれる事ができる。


 ガラスを見つめる1匹のメスは、その中の何を見ているのだろうか。もしかしたら、染色体の温度変化の影響が脳には影響してなくて、自分をオスとして認識しているのかも。ギリシャ神話のエロスさながらのナルシジズムがその姿にあるのかもしれない。


 馬鹿らしい。けれど、教えて欲しい。


 私はガラスを布で覆い、反射が起こらないようにする。そして、自分の椅子にガタリと座る。机の上には一つ鏡。


 はっとして、そこな1匹のトカゲの顔が映る。ぺたりと顔を触る。鱗なし。


 私はその顔をちゃんと見てから、パタリと鏡を倒した。


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