途切れたカセットテープ
家の裏には川があって、そこに水が流れている。小学生である僕たち兄弟が入れるくらいに往来がしやすくなっているのだから、そこには人の生活感が滲み出す。
ゴミがその川にはぽつりぽつりと落ちている。僕の家はお世辞にもお金がある家とは言えないからそこにあるゴミ達は初めて見るおもちゃと同義である。
「これは何?」
「カセットテープ」
「何それ?」
「音楽とか、音をそこに保存していたのさ。今はスマホでなんでも聴けるから要らないけど」
兄は知った様に言う。知らないだろうことは僕も知っていたが、兄よりかはカセットテープについて知らないので、黙って聞いている。
ガチャンっと音がする。
「あ……」
兄はそのカセットテープを河岸の岸壁に思いっきり投げつけるとプラスチックの部分が砕け散る。中からテープが吹き出す。腑みたいに。
「ねぇ、これ聴いたことある?」
「え!◯◯の今週発売のやつ?」
「うん、そう。お父さんが買ってくれて。これ、ダビングしたやつだからあげるよ」
「いいのか!」
夕陽に揺れる彼の表情を見ていると、顔が綻ぶ。
「聴いていい?」
「えっ?いや、えと家に帰ってから聴いて欲しいかな」
「そうか、分かった!」
「A面の曲聴き終わったら、B面に変えず最後まで聴いて欲しい。出来れば」
「おう!」
彼の顔が純朴で何色にも染まらず、私だけが夕陽に溶け込む。
出来るなら、A面の終わりの付け足しを聞いても名残惜しんで、ひっくり返さないでいてくれれば嬉しい。
A面の終わり、ガチャンとカセットが鳴るまでは。




