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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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狂い咲きの向日葵

 

 『月が綺麗ですね』と夏目漱石は訳した。月とは奥ゆかしく、美しい表現だと頭で思い、仄かに埃の積もる部屋で私はスマホを持ち上げる。夜。


 LINEに1人、Instagramに1人、深くは語るまいが彼らは私の熱である。


 月夜は清く涼しいものであるが、彼らは違う。その差異に私は幾度となく身を焦がす気を感じても、私は向かう。


 私の名前は『ひまわり』、平仮名でそう書く。苗字は良かろう無くてもさして私を表現し得ない。


『何してるの?』LINEの彼は文面でいう。近くにいて、彼は私の手に触れて、頭を撫でて、落ち着かせ、揺らめく。時として、近づきすぎた私はその手を焼き焦がす、その手を暖めるのも彼である。


『いつ会える?』Instagramの彼はメッセージを私に送る。彼の名前がなんなのか知らないが『陽介』と書かれている。彼は遠い場所にあって、でも私は目を離せない。遠い場所にあるから安心して手を伸ばして近づける、見ていられる。


 私はスマホを置き、空に手を伸ばす。私の熱を健やかに奪い、私を照らす。今日は月が綺麗だ。


 手を伸ばす、ずっと筋繊維の千切れないばかりに手を伸ばし、顔を向ける。けれど火が月になる事も、太陽が月に変わる事もない。私はパタリと手をフローリングに落とす。


 スマホを拾う。月の光に似たブルーライトに熱。だから、私はずっとひまわり。

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