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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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濡れなかった毛布


 怖い夜がある。数メートル先にあるトイレに行くのが怖い、鏡を見つめるのが怖い、冷蔵庫に照らされる瞬間が怖い、光がついた時のカーテンの裏が怖い。


 大人にあってもそう言う時はあるが、大人になると意を決せる、お化けなどいない、光に現れる誰かなどいない、後ろに誰もいない。それが寂しくなるくらいの現実だと信じ込める。


 でも大人にも怖い夜がある。なんでだろうと考えを巡らせど答えなどは勿論出ない。大人になっての怖いものほど、怖いものはない。子供にはそれが怖くないのだろうけれど、優劣はない。


 ただ大人の怖いものも夜にやってくる。夜から朝にかけてやってくる。1秒に1秒だけ確かに近づいてくる。確かに合って、絶対に逃げることはできない。幽霊からは逃げることができる。トイレが終われば、走って布団に逃げ込めば良かった。


 私は毛布を抱き震えている。子供の時なら無敵のエリアだったのに、ここはもうそうではない。確かに迫ってくるそれに肩を震わせて、呼吸を乱す。


 ゆっくりと迫ってくるそれは、手を伸ばし、私の背中のそこにまでやってきて。ドアの開く音がする。それはしとしとと近づくと私の布団に触れる。そして、ゆっくりと中に入ってくる。


「眠れない」


「えっ?」


 小さな顔の大きい目のそれはうるうるとした顔で私を見つめる。何も返せずに、それは布団に潜り込む。暖かい。


 頭で思う。子供と大人の怖いものは違う、だから。


 2人は怖いものから隠れる。相手の暖かさだけを感じて。

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